日本航空や全日空でパイロットの飲酒問題が相次ぎ発覚したことを受け、規制の強化に向けた議論が始まった。
国土交通省は有識者による検討を踏まえ、パイロットに対する乗務前アルコール検査の義務化やアルコール濃度の上限値の設定などを決める方針だ。
速やかに、実効性のある規制を導入してもらいたい。航空各社やパイロットには、最終的に人命を守るのは自分たちだという責任意識を改めて胸に刻んでほしい。
パイロットの飲酒については、乗務前8時間の禁止が国際的な最低基準となっている。日航の社内規定は、より厳しい「乗務前12時間」だったが、ロンドンで逮捕された副操縦士の血中からは、英国の規定の9倍を超える濃度のアルコールが検出されたという。
禁酒時間を厳しくするだけでは、解決にならないということだ。
信頼できる検査の方法や、検査をすり抜けた際の罰則、さらに飲酒に対する適切な指導が欠かせない。
何をもって酒気帯びかを判定する統一基準がこれまで国内に存在しなかったことは大いに問題である。
航空法は、パイロットが飲酒などにより「正常な運航ができないおそれがある間は」業務を行ってはならないと定めている。「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」という罰則もある。
だが、基準があいまいだ。アルコール濃度の上限値など客観的なルールが不可欠である。
一方、こうした上限値が国ごとに異なるのも気になる。ばらつきが解消に向かい、全体の信頼度が高まるのが望ましい。
ただ、規制を強化・徹底するだけでは不十分だ。飲酒の背景に過密な勤務スケジュールなどからくるストレスの蓄積はないか。世界的なパイロット不足は今後20年ほど続き、深刻化が懸念されている。健康面への留意はより重要になる。
ひとたび起こると多大な犠牲を強いられるのが航空機事故だ。海外では、飲酒との関連が指摘される墜落事故も報告されている。
制度や技術の改良はもちろん、健康管理も含めた安全教育こそ要だということを忘れてはならない。