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英EU離脱協定案 政治無関心、皮肉な逆説=京都大教授・中西寛

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中西寛、京都大学教授=東京都千代田区で2018年3月7日、太田康男撮影
中西寛、京都大学教授=東京都千代田区で2018年3月7日、太田康男撮影

中西寛(ひろし)

 来年3月29日に予定されている英国の欧州連合(EU)からの離脱協定案が当局間で合意され、離脱交渉がクライマックスを迎えている。交渉の帰趨(きすう)はヨーロッパだけの問題でなく、来年の世界を占う上でも重要な意味をもっている。

 協定案は600ページ近い大部なものだが、英国のEU離脱を完全決着させるものではなく、2020年末までを移行期間として困難な争点についてさらに交渉を続けるための中間的な協定である。離脱後のEUとの通商協定交渉と共に最難問となったのは、当初は争点としてほとんど意識されなかったアイルランド島内にある英国の一部の北アイルランドとアイルランド国との間の国境問題だった。

 かつて英国の一部であったアイルランドは、1922年にその南部がアイルランド自由国として独立した。しかし北部では英国内の残留を求める勢力とアイルランド国(37年に改称)との統一を求める勢力が対立し、60年代からは暴力的紛争が続いた。98年に至って、北アイルランドを英国内に残しつつ、アイルランド島内の国境を自由通行とするベルファスト合意が成立し、平和が訪れたのである。

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