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松原隆一郎・評 『神戸 闇市からの復興 占領下にせめぎあう都市空間』=村上しほり著

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 (慶應義塾大学出版会・4536円)

精密かつ大量の調査から描く

 「闇市」といえば、スクラップ・アンド・ビルドで再開発されたビル群の隙間(すきま)を縫うようにして点在する路地を思い起こす。東京では藤木TDCの『東京戦後地図 ヤミ市跡を歩く』(実業之日本社)が活写したような、たとえば新宿駅沿いの「思い出横丁」(俗称・ションベン横丁)や吉祥寺駅北口前の「ハモニカ横丁」である。それらはいまなお店舗が営業中で、外国人観光客をも集めて活況を呈しているが、一方で渋谷の宇田川町のように名残りすら残さないものもある。

 対照的なのが神戸である。本書が注目する「闇市」は、そのものはたった一年間で失われた。それでいて、お洒落(しゃれ)な都市空間に亀裂のような痕跡を残したというのだ。それが終戦直後に現JR三ノ宮・元町間の一・二キロメートルにわたる鉄道高架下や南側舗道・緑地帯に出現し、「日本一」の盛況を誇った「三宮自由市場」である。著者はその成り立ちや消滅、その後のゆくえを精密に描いている。

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