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東名あおり事故

遺族「なぜあの場所に停車させたか」

事故時に嘉久さんが身につけていた衣類を手にしながら、嘉久さんとの思い出を話す文子さん=静岡市清水区で2018年11月7日、木下翔太郎撮影
萩山嘉久さん=遺族提供
萩山友香さん=遺族提供

夫婦死亡で危険運転致死傷など 横浜地裁で12月3日初公判

 神奈川県大井町の東名高速で昨年6月、あおり運転で停車させられた車がトラックに追突され、萩山嘉久さん(当時45歳)と妻友香さん(同39歳)が死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)などの罪に問われた石橋和歩被告(26)の裁判員裁判が、12月3日から横浜地裁で始まる。初公判を前に、嘉久さんの母の文子さん(78)が胸中を語った。【木下翔太郎】

 静岡市清水区で自動車整備店を経営していた嘉久さんは、故障で立ち往生した車を無料で修理するような優しい性格だった。あの日、石橋被告に遭遇しなければ「今も好きな作業を(車の油で)真っ黒になってやっていたのに」と思う。

 事故時に着ていた嘉久さんの衣類が手元に戻った。事故の衝撃で靴下に穴があき、シャツには血がにじむ。だが「嘉久が戻ってきた気がして心が落ち着いた」と言う。しばらく玄関のそばに置き、外出の際に「行ってきます」と声をかけ、寂しさを紛らわせた。

 起訴状によると、石橋被告は昨年6月5日午後9時35分ごろ、下り線のパーキングエリアで嘉久さんから駐車方法を注意されて立腹し、一家4人が乗ったワゴン車を乗用車で追跡。進路に割り込んで減速するなどのあおり運転によってワゴン車の進路を塞いで中央分離帯そばの追い越し車線に無理やり停止させ、後続のトラックによる追突事故を引き起こした。その直前には、車を降り嘉久さんの胸ぐらをつかむなどの暴行を加えていたとされる。

 当時は高校1年と小学6年だった夫婦の娘2人も車内にいてけがをしたが、事故直前の状況を詳細に警察へ証言し、立件につながった。現在は友香さんの両親の元で暮らしている2人を、文子さんは「両親を亡くした悲しみを背負って生きていかないといけない」と思いやる。

 弁護側は、停車後の事故には危険運転致死傷罪を適用できないと主張する。だが、文子さんは「追い越し車線で停車させたら大変な事故が起きることくらいわかるはず」と憤る。

 事故後も各地であおり運転のトラブルが後を絶たず、被害者が亡くなるケースも起きている。文子さんは「危険運転が認められなければ、あおり運転をする人はなくならない」と考える。被害者参加制度を利用して公判に参加するつもりだ。「なぜあんな場所に停車させたのか」。被告が何を語るのかに注目している。

争点は「あおり運転に危険運転致死傷罪を適用できるか」

 公判では、石橋被告のあおり運転行為に危険運転致死傷罪を適用できるかが争点になる。神奈川県警は自動車運転処罰法の過失運転致死傷容疑で被告を逮捕したが、横浜地検は危険運転致死傷罪の構成要件である「通行妨害目的での著しい接近、重大な交通の危険を生じさせる速度での運転」にあたると判断し、同罪で起訴した。最高刑は過失運転致死傷罪が懲役7年、危険運転致死傷罪が懲役20年で、量刑の差は大きい。

 ただ、横浜地裁での公判前整理手続きで、地裁が危険運転致死傷罪の適用に疑問を示したとされる。地検は同罪が成立しない場合に備え、「追い越し車線上に停止させ、その場にとどめたことが事故につながった」として監禁致死傷罪を予備的訴因に追加した。

 これに対し、弁護側はあおり運転行為は認めた上で、停車後の事故に危険運転致死傷罪を適用できず、監禁致死傷罪も「停車させた時間が短く、監禁の認識があったか疑問」と主張。両罪については無罪であり、暴行罪が相当としている。

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