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平松 洋子・評『祇園、うっとこの話』谷口桂子/聞書き

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祇園、花街、縁(えにし)、女二代あでやかに、ひたむきに生きる

◆『祇園、うっとこの話 「みの家」女将、ひとり語り』谷口桂子/聞書き(平凡社/税別1800円)

 聞書き『祇園、うっとこの話』がおもしろい。「うっとこ」とは、家のこと、自身のこと。はんなりとした祇園言葉にのせて、花街で生きてきた起伏の激しい道のりが率直に語られる。たおやかな口調の背後に一本スジの通った芯の強さ、神経の濃(こま)やかさが浮かび上がってくるのだが、それは、京おんなの強さというより、祇園という世界で生き抜く手立てなのだと気づくとき、「うっとこの話」がいっそうの陰影を帯び始める。

 語り手は祇園「みの家」当代女将(おかみ)、吉村薫。祇園にこのひとありといわれた伝説の女将にして女実業家、吉村千万子の娘である。千万子の名前は、瀬戸内寂聴が瀬戸内晴美の筆名時代、祇園に取材して著した小説『京まんだら』のモデルとしてご存じの方も多いのではないか。「みの家」には数多くの著名人、文化人が出入りした。小説中、「竹乃家」として書かれるお茶屋は「みの家」、千万子は「芙佐」、薫は「稚子」として登…

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