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社説

ゲノム編集ベビー 事実なら重大な倫理違反

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 中国の研究者がゲノム編集技術を使って受精卵の遺伝子を改変し、そこから双子の女児を誕生させたと発表した。発表内容が事実だとすると、医学的にも倫理的にも正当化できず、生まれてくる子どもを実験に使ったに等しい。

 関係する大学や病院は、中国政府とも協力し、まずは事実関係を明らかにすべきだ。今後、こうしたことが起きないよう、それぞれの国が防止策を徹底すると同時に、国際的なルール作りも検討する必要がある。

 ゲノム編集ベビーの誕生は南方科技大の賀建奎(がけんけい)副教授が香港で開催中の国際会議で報告した。夫がエイズウイルス(HIV)感染者のカップル7組を対象に、体外受精の際にゲノム編集技術を使い、HIV感染を防ぐための遺伝子改変を受精卵に施したという。

 ヒトの生殖細胞の遺伝子を改変して子どもをもうけることは、安全性が確立していないだけでなく、加えた操作が世代を超えて伝わる。

 両親が望む容姿や能力を持つ「デザイナーベビー」の作製につながる可能性もある。現時点で認める段階にないというのが国際的な合意だ。遺伝子操作した子どもを出産させることは、独仏英などが法律で禁じ、中国も国の指針で禁じている。

 賀氏は中国や途上国でHIV感染が多いことなどを実施理由に挙げたが、今回の試みに医学的な必要性はなく、むしろ、子どもに新たな性質を付け加える試みと言っていい。

 しかも、この遺伝子の改変で、別の病原体に感染しやすくなるなど、悪影響が出る恐れがある。標的以外の遺伝子を傷つけ、障害を持つ子どもが生まれる恐れも否定できない。

 こうした臨床研究には、独立した複数の倫理審査が欠かせないが、どのような手続きを踏んだのかさえ賀氏は明らかにしなかった。

 今回使ったというゲノム編集技術は高度な専門知識がなくても扱えると言われる。それだけに、不妊治療の一環として民間クリニックなどで安易に使われる可能性がある。

 日本は国の遺伝子治療臨床研究の指針で生殖細胞の遺伝的改変を禁じているものの、医療行為は対象に含まれず、法規制もない。今回のことを契機に、早急に法整備の検討を進めるべきだ。

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