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社説

水道事業の運営権売却 不安の声に答えていない

 水道法の改正案が国会で審議されている。自治体が持つ水道の運営権を民間企業に売却することに道を開く内容だ。

     水道事業は市町村による経営が原則だ。だが、事業を取り巻く環境は厳しさを増している。人口減少に伴い需要が減り続けているためだ。

     約3分の1の事業者は収入減などでコストが収入を上回る。政府は水の需要について、50年後はピーク時より約4割減ると試算している。

     しかも、高度成長期に整備された施設の多くは老朽化し、更新期を迎えている。耐震化も迫られている。

     民間企業に運営権を売却する手法が浮上している背景には、そうした状況がある。

     確かに、経営改革は避けられないだろう。ただし、水道は生命や生活に直結するライフラインだ。この点を十分にわきまえる必要がある。

     改正案が認めようとしているのは自治体が施設を保有したまま、民間に運営権を長期間にわたり売却する方式だ。民間のノウハウ導入によりコスト削減や、施設更新を促進することを狙う。

     だが、民間に経営を委ねるこの方式には不安な面が多い。企業が利益追求に走り、料金高騰や水質の低下につながるおそれがあるためだ。

     実際、海外では水メジャーと呼ばれる巨大資本による民営化が失敗し、公営に戻すケースが目立つ。15年間に37カ国235都市で公営に戻されたとの集計もあるほどだ。

     政府は民間に委託しても自治体が料金の枠組みを条例で決め、国の立ち入り調査権限を盛り込むため、問題ないと説明している。

     しかし、施設の更新など安全対策を「人質」に値上げを要求された場合、自治体は拒否できるだろうか。大災害などの際に本当に民間会社が責任を持って事業を継続するかについても懸念される。

     国がどこまで事業を監視できるかも疑問だ。英国では事業を料金、安全、顧客対応の点から監視する組織が置かれている。こうした事例をもっと研究すべきだろう。

     与党は今国会での成立を図るが、新潟県議会が法案への反対を決議するなど、地方から不安の声が起きているのはもっともだ。結論を急いではならない。

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