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若島正・評 『カルパチアの城 ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密』=ジュール・ヴェルヌ著、新島進・訳

 (インスクリプト・4536円)

 『八十日間世界一周』『地底旅行』『海底二万里』といった、今でも読み継がれている作品の著者としてあまりにも有名なジュール・ヴェルヌに、<驚異の旅>という連作シリーズがある。一八六六年から刊行が始まり、死後出版されたものも含めれば、長篇だけで六十作を超えるというとてつもないスケールのこのシリーズは、当時のフランス読書界のみならず、後の時代のさまざまな国の人々にも、大きな刺激を与えてきた。しかし残念ながら、このシリーズは約半数が未訳のままで、わたしたちにはなかなか全貌をつかむ機会がなかった。現在刊行が進行中の、「ジュール・ヴェルヌ<驚異の旅>コレクション」は、こうした現状を変えようとする試みであり、初版時の挿画も完全収録し、詳細な注釈を付すなど、決定版と言える書物に仕上がっている。全五巻のうち、第三回配本として出たこの『カルパチアの城 ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密』は、中期を代表する作品の一つであり、トランシルヴァニアを舞台にしているところから、ブラム・ストーカーが『ドラキュラ』のヒントをそこから得たのではないかとしばしば言われている「カルパチアの城」と、死後出版された作品で、ヴェルヌがH・G・ウェルズの『透明人間』に対抗心を燃やしたと思われる「ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密」の二作をカップリングするという、取り合わせ…

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