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「壁」と世界

序章 消えぬ祖国・東独/1(その2止) 崩れる「平等」「公平」 歴史動かした統一への熱狂

ベルリンの壁崩壊当時、東独政府トップだったエゴン・クレンツ氏=ベルリンで、ザンドラ・ベルケ撮影

 

格差社会 旧東独側に芽吹く排外主義

 1989年11月9日午後9時近く、東ドイツの国家元首、クレンツ国家評議会議長は1本の電話を受けた。相手は暗殺工作で恐れられた国家保安省(通称シュタージ)を率いるミールケ国家保安相。そのころ、ベルリンの壁の前に西独行きを求める群衆が大挙していた。

 「どう対処しましょうか?」。指示を仰ぐ国家保安相に対し、クレンツ氏は「何か提案は?」と聞き返した。クレンツ氏は長年、独裁者として君臨したホーネッカー国家評議会議長に代わり10月に就任したばかり。今、東独市民に国境通過を許せば政府の権威は失墜する。だが、強行鎮圧すれば血が流れる。決断に窮するクレンツ氏を部下のミールケ氏が突き放した。「指揮官はあなたです」

 80年代、ソ連や東欧諸国など社会主義国が進めた経済政策は過剰な軍備拡張や汚職などから行き詰まった。…

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