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気高く強く生きた女の歩み 岩尾光代さんが「姫君たちの明治維新」出版

「『人に歴史あり』と言いますが、歴史は人間によって作られるものなんですね。人生にどう向き合ったか、その姿勢を意識して描きました」と語る歴史ジャーナリストの岩尾光代さん=中澤雄大撮影

 石川啄木の有名な一首<新しき明日の来るを信ずといふ-->に込められた思いをそのまま書名に用いて、山口シヅエら初の女性衆院議員39人の誕生秘話を描いた歴史ジャーナリストの岩尾光代さんが、明治150年にあたる今年の秋、再び野心作「姫君たちの明治維新」(文春新書)を世に送り出した。焦点を当てたのは大名家と皇族の姫君31人。前著と共通するのは、歴史に翻弄(ほんろう)されながらも、気高く強く生きた女性の歩みである。【中澤雄大/統合デジタル取材センター】

    ほとんど残っていない姫君たちの記録

     歴史の闇に埋もれがちな声を丹念な調査で拾い上げた著者は長年、総点数95点・総発行数1900万部の大ベストセラー写真誌「1億人の昭和史」(毎日新聞社)シリーズを担当した人。膨大な古写真を整理収集し、「昭和」という激動の時代をひもといてきた編集者としての自負が、この難業に挑ませた。

     「古写真を見ていると、その時代に入り込んでしまうんですね。文字に残る記録だけでなくて、時代の空気感を再現しなければと思ったのです。身分にかかわりなく、歴史の影となった声を掘り起こすこともジャーナリズムの役割だと思い、姫たちへの関心を持ち続けていました」

     明治維新を振り返る時、近代国家への階段を上り始めた正史に目は向きがちだが、著者の視点は裏面史へと向かう。旧皇族・華族の親睦団体「霞(かすみ)会館」の信頼協力を勝ち得て、別冊シリーズ『日本の肖像』を編集した際、約40家の蔵を調べたが、女の人の記録がほとんど残っていないことに気づいたという。

    政の「駒」 「お家第一」の時代に翻弄

     なぜ姫君たちは語られることが少なかったのか--。生まれながらに政の「駒」として、権力闘争や政略結婚の犠牲になった側面が強かった。何よりも「お家第一」であり、己の気持ちは二の次とされた時代である。ましてや、戊辰(ぼしん)戦争で落城した諸藩の妻たちはなおさらであった。

     「系図に名前もなく、ただ『女』とだけ記されたケースもあった。姫たちの写真を見ているうちに脳にインプットされて、彼女たちが『外に出して!』と訴えている気がしたほどです」

    皇女和宮御像=大本山増上寺提供

     本書は、「徳川瓦解(がかい)を見届けた妻たち」=十三代将軍家定夫人の天璋院篤姫(てんしょういんあつひめ)と十四代将軍家茂(いえもち)夫人の静寛院宮親子(せいかんいんのみやちかこ)内親王(和宮)▽十五代将軍慶喜を巡る「徳川の女」=実母・登美宮吉子(とみのみやよしこ)女王と伏見宮家の王女・徳信院直子(とくしんいんつねこ)ら▽加賀百万石「前田家」=輿(こし)入れで朱塗りの門(東大赤門)を造らせた十一代将軍家斉の娘・溶姫(やすひめ)と姑(しゅうとめ)・真龍院隆子ら--など全6章から成る。

    「歴史は人によって作られる」

    維新動乱で命からがら逃げ延びた北海道・松前藩正室の維子(ふさこ)の墓があることを突きとめた=岩尾さん撮影

     波乱に満ちた人生を送った先人に対し、著者は同性ならではの敬意と気遣いを忘れず、終始ぬくもりある筆致でつづる。なかでも終章の「戦火のかげで落城の妻たち」は、取材者魂を感じさせた。維新動乱で命からがらに逃げ延びた松前藩正室二代の足取りを追い、東京・染井霊園に維子(ふさこ)の墓があることを突き止めた。

     華やかな芸風で知られた歌舞伎役者の十五代市村羽左衛門の母・池田絲(いと)の人生にまつわる著者の嘆きは、正史からはうかがえ知れない人間模様を見たからであろう。

     「『人に歴史あり』と言いますが、歴史は人間によって作られるものなんですね。人生にどう向き合ったか、その姿勢を意識して描きました」。時代に真正面から立ち向かった足跡がここに、確かにあった。

    略歴 岩尾光代(いわお・みつよ)

     歴史ジャーナリスト。1946年、群馬県生まれ。本書は「サンデー毎日」連載の「おんな維新物語」に大幅加筆して出版。「週刊読書人」に「読写! 一枚の写真から」を、「女性展望」に「市川房枝写真抄伝」をそれぞれ好評連載中。著書に「新しき明日の来るを信ず」(文庫版「はじめての女性代議士たち」)、「歴史ポケット人物新聞 伊藤博文」。共著に「幕末維新の美女紅涙録」など。

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