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武田 砂鉄・評『悲しくてかっこいい人』イ・ラン/著

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その瞬間瞬間のことを丁寧に掘り下げていく

◆『悲しくてかっこいい人』イ・ラン/著 呉永雅/訳(リトルモア/税別1800円)

 オマエに本心なんか伝えるかバカ、と思うことがしょっちゅうあるのだが、なんだか最近、「本音を言う」だとか「心を開く」という行為が無闇に礼賛されすぎて気持ち悪くなることが多い。自分に正直になればなるほど自分なんてものはわからなくなるし、とブツクサ呟(つぶや)きながらこの本を読むと、すっかり、この人ならわかってくれそう、と思う。でも、そんな理解なんて、嫌がられるに違いない。

 韓国人アーティストによる73編のエッセーは、戸惑いの後に怒りが宿り、怒りの後に喜びが生まれて、そのうち、感情がどこかへと静かに消えていく。ゆっくりと紡がれた言葉によって、感情が運ばれていく様を堪能する。自分で自分を抱きとめるための言葉に思えるのに、そこから漏れるわずかな光が、読み手をしっかり照らす。その途端、言葉が力強くなる。

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