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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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男鹿のナマハゲなどのユネスコ無形文化遺産登録で…

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 男鹿のナマハゲなどのユネスコ無形文化遺産登録で一躍人々の関心を集めた来訪神(らいほうしん)信仰だが、やって来る神々は異形の仮面の鬼ばかりと限らない。これからの冬の季節にひそかに訪れる神々もいたという▲かつて日本の各地には旧暦の11月にダイシ様という不思議な客がやって来るという伝承があった。ダイシ様の正体は各地を巡り歩いた伝説のある弘法大師(こうぼうだいし)や行基上人(ぎょうきしょうにん)らの高僧といわれ、土地により聖徳太子(しょうとくたいし)や安倍晴明(あべのせいめい)の名もでてくる▲訪れるダイシ様は貧しい姿で足が悪く、子だくさんという姿もとる。「足跡隠しの雪」伝説は一夜の宿を求めた僧のもてなしのため盗みをした貧しい老女の話である。僧は実はダイシ様で老女の足跡を雪を降らせ隠してあげたという▲冬至に近い旧暦11月23日の大師講は、こうした伝承を背景に小豆がゆなどを食べる年中行事だった。ダイシ様は太陽をよみがえらせ、春を呼びよせてくれる来訪神ともいわれる。こう聞けば、同じ季節の似たような行事が思い浮かぶ▲そう、キリスト教が広がる前の冬至祭が起源といわれるクリスマスである。今日の日本のダイシ様はさしずめ子どもたちが待ち構えるサンタクロースだろう。人の心に奇跡を運んでくる来訪神たちはさまざまに姿を変えてやって来る▲ちなみにドイツの伝説ではサンタにもナマハゲのように悪い子を懲らす従者がいて、黒いサンタといわれた。北半球で夜が最も長くなるこの季節、ひそかにやって来た神々を私たちはちゃんと見抜けるだろうか。

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