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社説

領土交渉の日露新枠組み 政治日程ありきは危うい

 安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領が北方領土を含む平和条約締結交渉の新たな枠組みで合意した。日露両外相を責任者とし、次官級の交渉担当者が実務を担う体制だ。

     河野太郎外相は1956年の日ソ共同宣言に携わった河野一郎元農相を祖父に持つ。ラブロフ氏は外相就任から14年で日露交渉の経験が長い。この2人が政治折衝にあたる。

     交渉担当者は国際法や過去の条約に照らして整合性のある条文を作成し、解釈にそごがないようにする。

     首相はこの枠組みで協議を進め、来年1月の訪露を経て、6月の主要20カ国・地域(G20)首脳会議出席に合わせて来日が予定されるプーチン氏と大筋合意を目指すという。

     しかし、いかにも短兵急ではないか。これまで領土交渉は前進しては挫折する繰り返しだった。多くの論点が存在し、いずれも対立を解くには至らなかったためだ。

     日露両首脳は、条約締結後に歯舞(はぼまい)群島と色丹(しこたん)島を日本に引き渡すと明記した日ソ共同宣言を基礎に交渉することで合意している。

     返還後の主権は当然日本にあるが、ロシアは明確にしていない。ロシアは残る国後(くなしり)島と択捉(えとろふ)島の返還交渉を拒否し、返還後の領土への米軍駐留の可能性を警戒する。

     そもそも日本は北方四島を日本固有の領土とし、ロシアは第二次大戦後に画定した領土と主張している。

     この対立を解消し、それを条文に落とし込む作業は一筋縄ではいかないだろう。とても6カ月あまりですべて解決するとは思えない。

     G20の直後には参院選も予定されている。首相が選挙向けに外交成果を誇示しようとすれば、ロシアに足元をみられるだけではないか。

     首相は以前、北方領土を非軍事化する考えをプーチン氏に提案したことがあったという。米軍を含めた非軍事化が領土交渉の条件になれば、米国との関係を損ねかねない。

     首相や外相は従来の政府方針である「四島の帰属」確定やロシアによる「不法占拠」といった認識の表明を控えている。交渉戦術というが、ロシアへの配慮が際立つ。

     条約の解釈があいまいだったり、一方的な譲歩を強いられたりすれば、国会での批准もすんなりとはいくまい。政治日程ありきでは危うい。

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