連載

神と喧噪の南アジアから

ニューデリー支局記者。1982年生まれ。2005年に入社し、福井支局、大阪社会部などで勤務。宗教と民族の多様性、発展と貧困、政治の混乱など様々なキーワードでくくれる南アジア。今何が起き、そしてどこへ向かうのか。将来を展望できるような情報の発信を目指します。

連載一覧

神と喧噪の南アジアから

拡散する風説 うわさに躍らされた人々に襲われる黒人たち

  • はてなブックマーク
  • メール
  • 印刷
黒人に対する差別の経験を語るナイジェリア出身のローレンスさん=ニューデリーで2018年12月2日、松井聡撮影
黒人に対する差別の経験を語るナイジェリア出身のローレンスさん=ニューデリーで2018年12月2日、松井聡撮影

根強い「カニバリズム」の伝説

 「黒人がインド人の子供を誘拐して食べている」。インドの首都ニューデリー郊外で11月22日夜、ナイジェリアとタンザニア出身の男女計4人が暮らす民家が、このうわさを聞きつけた地元住民ら約200人に取り囲まれ、襲撃されそうになる騒動があった。男女は民家の窓から逃げたり、警察に救出されたりするなどして事なきを得た。地元警察は「黒人の中には不法滞在者もいたが、誰も誘拐されていないし、ましてや食べられた子供なんていない」とうわさを完全否定する。だが、黒人の「カニバリズム」(人を食べる習慣)を信じる地元住民は多い。

 事件から10日後、現場となったカクロラ地区を訪れた。今にも崩れそうな木造の粗末な小屋が建ち並び、牛など家畜の排せつ物の異臭が鼻をつく。この地区には牛乳の産業に従事する貧しい労働者が多く住む。ここから約15キロ離れたグルガオンにはIT企業や外国企業が集積し、近代的なビルや富裕層向けの高層マンションが乱立している。両者のコントラストは、開発と貧困が同居する現在のインドを象徴するかのようだ。

この記事は有料記事です。

残り1455文字(全文1918文字)

あわせて読みたい

注目の特集