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強みを生かし果敢に挑戦するまち

 今年10月、北海道東神楽町へ課題解決のヒントを探るため自治体職員とともに伺い、山本進町長をはじめ、まちのキーパーソンとの意見交換、基幹産業の現場視察を実施した。同町は、旭川市に隣接する面積68.5平方キロ、人口1万331人(今年7月末現在)。神楽の地名はアイヌ語で「神々の遊ぶところ」の意味。

     大雪山連峰のふもとに広がる上川盆地の肥沃な土壌を生かし、米と野菜を中心に農業が盛んだ。農業女子プロジェクトの推進など、儲かる農業を実現している。特徴は若い農家の新規参入と耕作放棄地が少ないことである。

     商工業としては、「旭川家具」の生産が盛んで、材質、デザイン、利便性にこだわった超高品質家具を生産している。工業団地内では食品加工や木工・クリーニング業などの事業所が元気だ。

     農地や住宅地のゾーニングが明確で、住宅地の近くに大型商業施設、学校や病院が立地。商店街はなく、空き地、空き店舗もほとんどない。ひじり野地区、中央市街地の2地域に人口の約9割が居住するコンパクトシティーとなっている。

     保育所待機児童ゼロ(2016年を除く)、中学生以下の医療費無料化、病児・病後児の預かり支援、町民一体型子育て支援、生まれた子どもたちに椅子を贈る「君の椅子」事業、子ども発達支援センターの整備、学童保育の利用拡大のほか、多子世帯の保育園・幼稚園の費用無料の対象要件を大幅に緩和している。

     町民アンケート結果によると、愛着を感じていない人は6%(12年)、他の町へ移り住みたい人は5.7%(17年)と地元への愛着心が強いことがうかがえる。子どもを大切にする高い町民意識からコミュニティー・スクールを導入している。驚くことに、40年間継続して人口が増加している。15年国勢調査速報値では、人口増加率は10.1%で北海道1位(全国10位)。子どもの割合の多さ(年少人口率)は道内で15年連続1位である。

     町内にある旭川空港は、延長2500メートルの滑走路を持ち、就航率95.5%(17年)。1976年に町土地開発公社による工業団地の造成・分譲が開始され、企業誘致を推進してきたが、この旭川空港の存在は大きい。82年にジェット機が就航し、大量の農産物の空輸も可能になった。工業団地には都市圏へのアクセスが容易になり、東神楽の経済・産業に大きなメリットである。

     農村地帯に囲まれた環境のよさ、上水道料金の近隣自治体と比べ安い、旭川市等の都市に近い自然のあるまちとして注目を集めたことなどが人口増加の要因である。

     課題は企業数の減少で、この5年間で約12%減少した。そこで、(1)にぎわいマーケット(創業の事前準備に試験的に農産物や加工品の販売)(2)にぎわい補助金(新規創業や第2創業、2号店等の出店に最大200万円補助)(3)ゼロ金利政策(3年間の利率・信用保証料の全額補助)を実施中である。

     官民一体となり、新しい取り組みとして、ラグジュアリー・ブランドは、黒毛和牛ハンバーグ、夏イチゴ、フルーツトマト、グリーンアスパラ、家具(椅子)等の10品、今年秋から東神楽そば、米、黒豆カレー&なたねカレー等の4品が地場産品に加わった。

     問題点から重要度、緊急度を鑑み課題を整理し、実践順番を決め、着実に解決していくことが重要となる。そこには、理念、目的・目標・使命の明確化、五感分析から基幹産業分析し、「五感六育」によるストーリー戦略の実践である。事業羅列、バラバラに実践することなく、まちを愛し、住み暮らす地元の皆さんと共感、共創し歩むこと、決して諦めることなく、果敢に挑戦し続けることが重要だ。今後とも先駆的な「ひと育て」「まち育て」の実現に協力・応援していきたい。

     きむら・としあき 1960年北海道生まれ。84年小樽市入庁。06年内閣官房・内閣府企画官。09年農林水産省大臣官房企画官。地域創生担い手養成、地域ビジネス創出、地域と大学との連携、6次産業化などを担当。現在、東京農業大教授、内閣官房シティマネージャー、総合政策アドバイザー、(一社)日本事業構想研究所代表理事、日本地域創生学会会長、地域活性学会常任理事ほか。博士(経営学)。NHK番組プロフェッショナル「仕事の流儀 木村俊昭の仕事」ほかに出演。

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