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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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「灰度哲学」は…

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 「灰度(はいど)哲学」は中国のファーウェイを世界トップ級の通信機器企業に育てた任正非(じんせいひ)氏の経営哲学という。白か黒かの完璧(かんぺき)さを求めず、多様性を受け入れ混沌(こんとん)の中から進路を見いだす思考をいうらしい▲「マネジメントに灰色の要素を残すことはファーウェイの生命の樹だ」は当人の言という(田濤(でんとう)ほか著「最強の未公開企業 ファーウェイ」)。中国の官主導体制とグローバル経済のグレーゾーンで新しい価値創造を果たした実感か▲驚いたのは、任氏の娘でファーウェイ最高幹部の孟晩舟(もう・ばんしゅう)氏がカナダで拘束されたニュースだ。米政府の要請を受けての拘束で、米国が制裁を科すイランとの違法金融取引の容疑らしい。「とらわれの姫」は世界中の耳目を引きつけた▲直ちに株安の波が世界各地の市場に及んだのも、米国のファーウェイ攻撃が通商摩擦の炎上を予感させたからだ。米政府はかねて同社の通信機器を通じ中国が軍事情報を盗み出しているとみて、市場からの排除措置を打ち出していた▲今や日本を含む世界170カ国で通信機器を売り、次世代移動通信規格の5G技術をリードする巨人ファーウェイである。中国がめざす技術覇権の柱と期待するのも、米国がその阻止に本腰を入れるのも、避けられぬ成り行きなのか▲おりしも日本政府は名指しを避けつつも政府の機器から安全保障上のリスクのある製品を締め出す方針を示す。一党支配下のグローバル通信機器企業から生まれたグレーゾーン、米中技術覇権争いの主戦場となった。

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