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文化財

この1年 邪馬台国論争 モモの種が一石

発掘調査の現場が公開された「大山古墳」=堺市堺区で2018年11月22日、本社ヘリから木葉健二撮影

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 今年は「古代史最大の謎」とされる邪馬台国論争に一石を投じるニュースがあった。最有力候補地とされる纒向(まきむく)遺跡(奈良県桜井市)から出土していた大量のモモの種の放射性炭素(C14)年代測定で「西暦135~230年の間に実った可能性が高い」という分析結果が出たことが、5月に明らかになった。卑弥呼(ひみこ)(248年ごろ没)の活動時期と年代が重なり、「畿内説」を強める成果として注目を集めた。

     C14年代測定は年代を求める過程で結果に幅が出ることがある。今回も100年という大きな幅があり、この結果を「何の意味もない」とする研究者もいる。ただ、出土土器の形式などから遺跡を3世紀前半とみるか4世紀以降とみるかで意見の相違がある中、モモの種が3世紀前半に納まるという科学の視点が示された意義は小さくない。異なる分野の知恵が合わさり、謎が解き明かされる日も遠くないかもしれない。

         ■  ■

     別の「謎」にも動きがあった。宮内庁と堺市が10月から12月にかけ、日本最大の前方後円墳「大山(だいせん)古墳」(仁徳天皇陵)=堺市堺区、全長約500メートル=を共同で発掘調査し、11月下旬に報道陣と研究者らに初めて公開した。調査した場所は三重の濠(ほり)の一番内側の堤で、円筒埴輪(はにわ)や石敷きが姿を現した。宮内庁は「静安と尊厳」を保つため陵墓への立ち入りは原則認めておらず、今回の調査も保全のためとの位置づけだが、巨大大王墓の一端が垣間見えたことに興奮を隠さない研究者もいた。

     発掘調査に外部機関である堺市の職員が初めて加わったことも注目された。宮内庁は「地元の知見を持つ堺市と現場で連携できたことは非常に有益だった」と意義を強調した。陵墓となっている古墳では墳丘と周濠などの周辺域が国と自治体で別々に管理されているケースも多く、こうした動きが適切な管理や公開につながるか期待される。

     大山古墳は、国が来夏、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産登録を目指す「百舌鳥(  もず  )・古市(ふるいち)古墳群」(大阪府)の「顔」と言える構成資産だ。登録が実現すれば世界から注目を浴びることとなる。保存や公開の問題に加え、学術的に被葬者が確定できない中で、宮内庁の陵墓名に沿った「仁徳天皇陵古墳」の名称を用いることが適切かなど、他の構成資産と合わせてまだ議論すべきことがありそうだ。

         ■  ■

     世界文化遺産では6月に「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎、熊本県)の登録が決まった。自然遺産を含め国内の登録は6年連続で22件目。「世界遺産」の言葉が新鮮さと威光を失いつつある中で、いかにその価値を発信し続けるかが各地で課題だ。また6月には改正文化財保護法が成立し、来年4月1日から施行される。「活用」の名の下に観光振興に重きが置かれ、保護の視点がおろそかにされないか懸念の声も上がる。

     「平成」から次の時代へと移り変わろうとする今、文化財を取り巻く状況も曲がり角にある。守り伝えられてきた有形無形の宝を前にただ感動するだけでなく、なぜ大切なのかを一人一人がじっくり考える来年にしたい。【花澤茂人】


    注目のニュース(本文で紹介したものを除く)

    <1月>長崎県のカラカミ遺跡で、漢字の「周」の左半分が刻まれた弥生時代後期の土器片が出土。漢字が記された土器として国内最古級

    <2月>福岡市の比恵(ひえ)遺跡群で古墳時代とみられる石製の硯(すずり)の破片が出土。奴国での文字使用を示す

    <5月>奈良県吉野町の宮滝遺跡で奈良時代前半の大型建物跡が出土。聖武天皇が滞在した「吉野宮」の正殿跡の可能性

    <6月>広島県立歴史博物館が、本州から九州まで全域が記された最古級の日本地図(14世紀)を確認

    <10月>奈良市の興福寺で、伽藍(がらん)の中心となる「中金堂」が約300年ぶりに再建。落慶法要が営まれた

    <同>京都市の鹿苑寺(ろくおんじ)(金閣寺)で14世紀末ごろの池の跡を発見。水を張った形跡が無く「未完の庭園」か

    <同>徳川家康の居城として知られる静岡市の駿府城跡周辺で、豊臣秀吉が家臣に築かせたとみられる天守台の石垣が出土。金箔(きんぱく)瓦も

    <同>奈良県明日香村の国内初の本格庭園「飛鳥京跡苑池」で、北池に階段状の護岸を発見。船着き場やみそぎの場か

    <11月>滋賀県栗東市の蜂屋遺跡で、法隆寺(奈良県斑鳩町)の創建時と大きさや文様が全く同じ瓦が出土。聖徳太子と関係のある幻の寺院跡か

    <同>奈良県葛城市の当麻寺(たいまでら)にある三重塔・西塔(国宝)の心柱の頂上で7世紀の舎利容器を確認。金、銀、銅の三重の「入れ子型」だった

    <同>「来訪神(らいほうしん) 仮面・仮装の神々」がユネスコの無形文化遺産登録決定。「男鹿のナマハゲ」など10件で構成

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