築地で働く男を狙い続けた写真家が撮る「最後の日」 豊洲で展示

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東京・築地市場の最終日=沼田学さん撮影 拡大
東京・築地市場の最終日=沼田学さん撮影

 カメラマンの沼田学さんが、東京・築地市場の最終日に撮影した写真展「10・6 築地市場最後の一日」が豊洲市場の銀鱗(ぎんりん)文庫で開かれている。

 沼田さんが友人に連れられて築地市場を訪れたのは、2016年春。水産仲卸業者売り場に足を踏み入れると、そのパワーに圧倒された。「人を撮りたい」と、市場を所狭しと走り回っていた小型運搬車「ターレ」に乗った働く男たちを“ゲリラ撮影”するように。無許可の撮影で怒られることもあったが、「謝りに行って写真を渡す機会ができた」とチャンスに捉えた。毎日のように築地に来て写真を撮る沼田さんを「仕事がないのでは」と心配してくれる人もいた。築地での出会いを楽しみながら撮り続け、翌年の夏、写真集「築地魚河岸ブルース」(東京キララ社)を出版した。

豊洲市場の銀鱗文庫で、築地最後の日の写真を展示する沼田学さん=中嶋真希撮影
豊洲市場の銀鱗文庫で、築地最後の日の写真を展示する沼田学さん=中嶋真希撮影

 築地に思い入れが強く、「移転しないでほしい」と思っていた沼田さんは、最後の一日は「撮りたくない日だった」と振り返る。沼田さんの背中を押したのは、元雑誌編集者で「築地市場 クロニクル完全版1603―2018」(朝日新聞出版)の著者であり、銀鱗文庫を運営する「築地魚市場銀鱗会」の事務局長を務める福地享子さん。「(文庫で)最終日の写真を飾らないか」と提案された。10月6日、トラックが出入りし始める深夜1時ごろから市場に入り、午後4時までの15時間、撮影した。

東京・築地市場の最終日=沼田学さん撮影
東京・築地市場の最終日=沼田学さん撮影

 「いつもと変わらない一日だった」と沼田さんは言う。「あいさつ回りをする人がいたり、いつもより車の行き来が多かったりということ以外は、普段通りだった」。展示された写真も、活気ある築地の一コマが映し出されている。

東京・築地市場の最終日=沼田学さん撮影
東京・築地市場の最終日=沼田学さん撮影

 「築地が好きだった」と話しながら写真展を見ていた女性がいた。東京都内のレストランで料理人として働く保科朝美さん。「築地は、買い出しのため3年ほど通った。古くて、ごちゃごちゃとした雰囲気が好きだった。近づきにくいけど、中に入ると面倒見のいい人が多くて。今は、違う世界になってしまった」と残念そうだ。「“築地シック”だったから、写真が見られてうれしい」

東京・築地市場の最終日=沼田学さん撮影
東京・築地市場の最終日=沼田学さん撮影

 最終日の写真は、何年も過ぎてから本当の価値が出るのではないかと記者が問うと、「寝かせる期間は必要かも」と沼田さん。「人の顔を撮っていたつもりだったけれど、築地という場所に“撮らされて”いたのかもしれない。それくらい、築地が持つ力は大きかった」と話していた。同写真展は25日まで。午前9時~午後2時。入場無料。

 沼田さんは、東京都中野区上高田のスタジオ35分で開かれているグループ展「ハイレゾ」(22日まで)で、別のテーマの写真が展示されているほか、1月5日から東京都新宿区の新宿眼科画廊で個展「水際と音楽と」を開く(1月16日まで)。【中嶋真希】

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