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社説

役員総退陣の革新機構 経産省「変節」の責任重い

 前代未聞の総退陣を招いた責任は一体、誰にあるのか。

     9月に改組・発足したばかりの産業革新投資機構(JIC)で、9人の民間役員全員が辞任を表明し、活動休止を招く事態が起きた。報酬を巡る経済産業省との対立がきっかけではあるが、問題の根は深い。

     官民ファンドに求める役割が、政府内、さらに民間役員との間で一致をみないまま始動したところに、混乱の火種が生じたようだ。

     JICは、安倍政権下で乱立した官民ファンドを整理し、強化するため作られた。一方、社長辞任を発表した田中正明氏らは、世界の一流民間ファンドと肩を並べる投資活動を思い描き、役員に就任した。

     田中氏自身も参加した経産省の研究会による報告書が経営理念になっていた。従来型の官主導による産業育成ではなく、失敗を恐れずチャレンジする経営者の後押しとなるような資本の供給を目指そうとした。

     ところが、次第に「国の意向を反映する『官ファンド』へ変化」(田中氏)していったという。辞任コメントを発表した星岳雄・米スタンフォード大教授も、「ゾンビ企業の救済機関になろうとしている」と経産省側の「変節」を痛烈に批判した。

     一貫性を欠く態度で新組織を混乱に陥れた同省の責任は重い。

     それにしても、JICの発足後に経産省が見せた変節は不可解である。成果主義の報酬体系など、同省の研究会が提唱していたではないか。一度JIC側に提示した報酬案を撤回した裏に何があったのか。

     世耕弘成経産相が言う「事務的な不手際」が原因とは信じ難い。官民ファンドはアベノミクスの「成長戦略」で重要な役目を負っていた。安倍政権として、JICをどう使いたかったのかを、最終的な所有者である国民に説明する義務がある。

     今回の辞任劇は、リスクを伴う新規ビジネスに投資マネーを供給する出し手が不十分な現状も映した。迅速に意思決定できる組織構造、運用のプロや投資資金をグローバルに求める運営、実績に基づく報酬。田中氏らが目指そうとしたファンドが日本にも必要なのは間違いない。

     ただしそれは、国民の資産ではなく、あくまで民間資金を使って推進すべきものである。

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