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余録

「能いよいよ多くして、徳いよいよ薄し」…

 「能いよいよ多くして、徳いよいよ薄し」。便利なものがどんどん多くなって、人々の徳はますますすたれていく--こう書いているのは中国古代の思想書「淮南子(えなんじ)」で、事物の起源を記した巻の一節である▲その事物の一つに漢字もあり、「むかし倉頡(そうけつ)の書(文字)を作るや、天は粟(ぞく)を雨ふらせ、鬼は夜哭(こく)せり」とある。倉頡は漢字を作ったとされる伝説上の人、文字ができると天から穀物が降り、鬼神は夜泣いた--とはどういうことか▲白川静(しらかわ・しずか)の「漢字の世界」によると、粟の雨は大異変を表し、鬼神は人知が自分らの霊力にとって代わることを嘆いたのだという。だが、いくら人知が開け、世の中が便利になろうと、鬼神のもたらす禍難(かなん)から逃れられないこともある▲この1年の世相を表す年末恒例の「今年の漢字」は「災」だった。大阪や北海道の地震、西日本豪雨や台風、さらに災害級といわれた猛暑にも見舞われた今年である。「災」は新潟県中越地震のあった2004年以来2度目となった▲「災」の上半分は洪水、下の火事と合わせて災いを表す漢字ができたという。阪神大震災のあった1995年の漢字は「震」、東日本大震災の11年は「絆(きずな)」。こう振り返れば、平成最後の年末を締めくくる漢字にふさわしくなくもない▲実際は獣骨を用いた占いの記録、つまり鬼神との交信から生まれた漢字である。人知の思い上がりを戒め、お互いに支え合わねば「災」には立ち向かえない。そんな徳の大切さを次代に伝える今年の漢字である。

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