父の再出発支え 加害者の息子、依存症回復の自立訓練施設を起業 川崎に

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷
アルコールやギャンブルなどの依存症回復施設「アルバ」を運営する金井駿さん=川崎市内で、飯田憲撮影 拡大
アルコールやギャンブルなどの依存症回復施設「アルバ」を運営する金井駿さん=川崎市内で、飯田憲撮影

 ギャンブルにおぼれた末に横領容疑で逮捕された父親を持つ青年が今年4月、川崎市に依存症の回復を目的とした自立訓練施設をオープンした。加害者の家族として味わった苦しい経験から、依存症だけでなく、依存症に起因する犯罪も減らしたいと運営法人を起業。専門家の助言を得ながら、利用者の再出発に寄り添っている。

 川崎市が指定した障害福祉サービス事業所「アルバ」(同市多摩区)を運営する金井駿さん(25)は、2016年春に横浜国立大学経営学部を卒業したばかりだ。事業を始めた背景には自身の生い立ちが影響している。

 小学生の時に両親が離婚。すぐに母親は再婚したが、2人目の父親のギャンブル癖が家族を苦しめた。テレビで競馬中継にかじりつき、母親との口論も絶えなかった。大学に進学し、1人暮らしを始めたころ、父親が逮捕された。中古ショップの従業員として店の商品を横流しした疑いだった。

 栃木県内の実家に残った母親や妹2人は近所の風評で肩身の狭い思いをした。家族が知らなかった父親の借金は数百万円に上り、母親は再び離婚した。「家族を崩壊させる依存症はなぜ起きるのだろう」。この問いがずっと心にひっかかった。

 大学入学当初は起業家に憧れ、ITベンチャーでインターンも経験したが、満たされない思いが募った。自分にしかできない仕事を考え抜くと、二度と思い出したくなかった父親の姿が浮かんだ。

 「依存症の人が罪を犯さずに済むよう、支える仕組みを作れないだろうか」。卒業と同時に刑務所出所者らの就労支援会社に入社。1年間、罪を犯した人たちの生きづらさを目の当たりにする一方、地域で受け止めてくれる社会資源の少なさも痛感した。

 17年4月に独立。依存症回復施設でボランティアをしつつ、福祉や心理学の専門家からノウハウも学び、施設開設に至った。薬物離脱プログラムで知られる更生保護施設「両全会」(東京都)企画室長で元法務教官の鷲野薫さん(64)も顧問となり、「若い世代がこうした分野に関心を持ってもらえるのは心強い」と背中を押す。

 施設は申請から半年で川崎市の指定を受けた。現在、アルコールやギャンブルで悩む20~70歳代の7人の利用者が通う。社会福祉士らスタッフ4人を採用し、依存症の回復プログラムをはじめ、教育や就労支援のサービスを提供している。

 半年が過ぎ、金井さんは刑務所などの矯正施設への講演にも出向く。「父親を追い詰めた依存症をなくすため、生涯をかけて取り組みたい」と意気込んでいる。【飯田憲】

あわせて読みたい

注目の特集