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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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「新しい料理の発見は人類にとっては一小惑星の発見より重大である」…

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 「新しい料理の発見は人類にとっては一小惑星の発見より重大である」。これは食通として名高いフランスのブリア・サバランの言葉という。博物学者のファーブルはその「昆虫記」の中でこの名言を引いている▲ファーブルは古代ローマの博物誌で木の中にいる「コッスス」という虫の料理が美味とあるのを知り、自分で試したのである。彼はコッススとみなしたヒロムネウスバカミキリの幼虫を串焼きにして塩をふり、家人らと共に食べた▲「焼き肉は柔らかで良い味を持っている。そこにはバニラみたいな香りをもつ焼き杏(あんず)の風味が認められた」。味は悪くないのにみんな二度と食べなかったのは、やはり気味悪がられたためらしい。フランスで昆虫食は普及しなかった▲ファーブルがセミのフライも試食したのは、哲人アリストテレスが味をほめていたからだ。日本人もイナゴやハチの子を食べるが、世界で今昆虫を食べているのは約20億人。国連機関も食糧危機への対策として推奨する昆虫食である▲先ごろ、熊本市内で食用昆虫の自動販売機が話題になっていると小紙西部本社版が伝えていた。商品は乾燥ゲンゴロウやバッタのチョコ包み、コオロギのプロテインバーなど。店主は食糧問題に関心をもってもらう狙いと話していた▲世界では食用昆虫の養殖など昆虫食ビジネスも動き出したとか。昔は欧米で気味悪がられた魚の生食--すしも今や世界の食通がたたえている。今に昆虫でも料理の新惑星発見の報が聞かれるのだろうか。

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