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余録

<それはまるで…

 <それはまるで、独楽(こま)の芯のようにきっちりと、ど真ん中に突き刺さっている。東京の中心に。日本の中心に。ボクらの憧れの中心に>。俳優でイラストレーター、リリー・フランキーさんのベストセラー小説「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」の書き出しだ▲オトンと別れ、ボクを女手一つで育ててくれたオカンとの物語はリリーさんの自伝的小説。北九州市生まれのボクは何かが変わると思って上京し、やがてオカンを呼び寄せるが、がんで亡くす。母と息子の深い絆を描く作品の大事な場面で東京タワーが登場する▲開業は経済復興が進む1958年。長嶋茂雄さんが巨人に入団した年だ。展望台に上ればハワイが見えるといううわさも流れた。あれから今月で60年を迎える▲東京スカイツリーができても首都のシンボルであり続けた。入場者は1億8000万人を超えた。今年春にはリニューアルされた特別展望台もオープンした▲入院中のオカンの手鏡に、ライトアップされた美しいタワーが映る小説の場面がある。ほほ笑むオカン。映画では樹木希林さんが演じた。九州から駆け付け、窓越しにタワーを見ているオトン。その2人と二つのタワーを見ているボク。<バラバラに暮らした三人がまるで東京タワーに引き寄せられたかのように、ここにいた>▲東京は地方の若者を吸い寄せてきた。夢がかなった人、ついえた人。久しぶりに東京タワーに上って眼下の街を眺めれば、若いころの自分と出会えるかもしれない。

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