- ツイート
- みんなのツイートを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷

ヘリコプターがぐらりと傾き、ビルの屋上から舞い上がった。かなたに海が見えたのを覚えている。
ベトナム戦争最末期の1975年4月30日、米国が支援した南ベトナム政府の首都サイゴン(現ホーチミン市)が陥落した。米軍は前日から30日朝までに、米国人ら約7000人をヘリで脱出させた。その中に当時5歳のリー・ニューン・ウィリアムズさん(48)と同3歳のエミー・マイ・グレイさん(47)姉妹がいた。「怖くて、泣き叫んでいた」。今は米国で暮らすリーさんが思い出す。
姉妹の父は米国人パイロット、母はサイゴンのホテルに勤めるベトナム人だった。救出ヘリが高層ビルに降りる--。そう聞いた母は29日、姉妹に一番いい服を着せ、ビルに向かった。友人宅の使用人だったベトナム人女性も同行した。しかし、屋上も階段も脱出しようとする大勢の人たちがひしめき、身動きできないほど。母は女性に強く言った。「子供たちと屋上に行って。もう下りてこないで」
この記事は有料記事です。
残り305文字(全文714文字)