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鉄剤注射

中高陸上選手の鉄剤注射 厳格な使用制限の徹底を

 中学や高校の陸上競技で鉄剤注射の使用が問題になっている。誤った使用は健康被害をもたらしかねない。使用制限の徹底が必要だ。

     日本陸上競技連盟は健康への影響から治療以外で使わないよう求めてきた。ところが、全国高校駅伝競走大会の出場校などで持久力アップなどの目的で使われている懸念があるという。競技力向上のために健康を損なうことはあってはならない。

     鉄分は血中で酸素を運ぶヘモグロビンの材料になり、持久力を左右する。足りないと貧血になり、過剰に摂取すると肝臓や心臓などに蓄積され機能障害につながる。

     鉄はドーピングの禁止薬物ではないが、直接静脈に入れる鉄剤注射はサプリメントに比べ過剰な摂取につながりやすい。日本陸連は2016年に発表した文書で「貧血が重症かつ緊急の場合などに限る」と定めた。鉄剤注射を原則的に認めない内容だが、それがきちんと守られているのか疑念はぬぐえない。

     日本陸連が今年、全国大会や大学駅伝に出場する大学生の長距離選手を対象にした調査では、鉄剤注射の経験について女子は17%、男子も11%が「ある」と答えている。治療以外では使用しないはずの鉄剤注射への正しい認識が陸上界に浸透しきっていないのではないか。

     長距離選手は体重が軽いほど有利になる。食事制限させる指導者は少なくなく、食事で補えない鉄分を摂取するため鉄剤注射に頼ることがあるという。

     20代の元女子選手は取材に高校時代の3年間、貧血でもないのに監督の指示で毎月、鉄剤注射を打ったと明かした。2年前の日本陸連主催のセミナーで山下佐知子・第一生命グループ女子陸上部監督は「鉄剤を摂取したり体重を制限したりして、練習を積める状態ではない体で入社する選手が多かった」と説明した。

     競技力向上のための鉄剤注射で健康を損ねれば選手生命にもかかわる。とりわけ成長途上にあるジュニア年代に対しては禁物だ。公正さに欠けるという見方もできよう。

     日本陸連はまず鉄剤注射の実態をきちんと調査すべきだ。それと同時に中学・高校や大学などに対し、治療以外には使用しないルールを厳守するよう指導する必要がある。

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