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遺伝子改変、歴史改変=粥川準二(科学ライター)

 先月末、中国の研究者が人間の受精卵にゲノム編集を行って、遺伝子を改変した赤ちゃんを世界で初めて誕生させた、と国際会議などで主張し、物議を醸した。彼が本当にそれを行ったのかどうかさえ明らかではない。しかし現時点でも彼の主張は感染症への理解を阻害するだけだ。

 彼は、男性がHIV(エイズウイルス)に感染している夫婦が体外受精でつくった受精卵の「CCR5」という遺伝子を、ゲノム編集技術「クリスパー・キャス9」で働かなくさせたと説明した。確かにCCR5がつくるたんぱく質はHIVの通り道となるものなので、理論的には感染の可能性が下がるかもしれない。

 しかしそれは「HIVの父子感染を防ぐ方法」として適切だろうか。HIVの父子感染を防ぐ方法はすでにある。精子を洗浄し、それを人工授精するのだ。まだ安全性も有効性も定かではなく、社会的なコンセンサス(合意)もない受精卵ゲノム編集を行う正当性はまったくない。

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