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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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「凍星」はいてつく夜空に鋭い光を…

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 「凍星(いてぼし)」はいてつく夜空に鋭い光を放つ星をさす冬の季語である。いつもわずかな星しか見えぬ都会でも、オリオン座はじめいくつかの星座を数えられる夜もある。さえわたる星空は人をちょっと哲学的にする▲「私たちはどこから来て、どこへ行くのか」。今では星空を見上げてのそんな問いが、まんざら的外(まとはず)れでもないらしい。地球の水や生命の起源は宇宙にある--つまりは空から降ってきたという見方が有力な仮説になってきたからだ▲「隕石(いんせき)重爆撃期」とは恐ろしい言葉だが、これは約40億年前に月や地球と小惑星など他の天体との衝突が頻発したとの説にもとづく天文学用語という。地球に水や生命のもととなる有機物を運んだのはこの「重爆撃」だったというのだ▲そんな仮説の主役ともいえる小惑星17個から水の存在を示す鉱物が見つかったという。火星と木星の軌道の間の小惑星帯を観測していた日本の赤外線天文衛星「あかり」が、小惑星表面の反射光から水を含む鉱物を検出したのである▲小惑星探査機はやぶさ2に続き地球近傍小惑星の探査を始めた米国の探査機も先日水の成分を確認したという。今までのはやぶさ2の観測では小惑星リュウグウの表面に水はなかったが、今後の地下からの物質採取などが注目される▲先日の小欄は小惑星の発見より新作料理の方が人類には重大という食通の言葉を引いたが、小惑星なしに料理も人類も水の惑星もなかったかもしれない。見上げれば、星の瞬く「故郷」が広がる冬である。

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