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事件の行方を国際社会が注視する中、捜査が急展開した。
日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告を、東京地検特捜部が再逮捕した。逮捕容疑は、会社法違反(特別背任)である。
私的な金融取引の損失を日産に付け替えて損失を与えた疑いだ。
特捜部は10日に金融商品取引法違反容疑で再逮捕したゴーン前会長を引き続き取り調べるため勾留延長しようとしたが、裁判所が却下した。
保釈されるのではとの観測が流れる中、特捜部はあくまで身柄を拘束し続けたかったのだろう。ゴーン前会長が保釈されれば、日本国内にとどまる保証はなく、特別背任での立件は困難になる可能性があった。今回の再逮捕で、局面打開を図ろうとしたようだ。
付け替えは、リーマン・ショックが起きた2008年のことで、デリバティブ(金融派生商品)取引で生じた18億円超の損失を穴埋めするものだったという。この付け替えは、証券取引等監視委員会が違法性を指摘し、戻したとされる。
逮捕容疑によると、ゴーン前会長側は09~12年、知人の口座に16億円超を入金させたという。特別背任罪は、会社の取締役らが自己や第三者の利益を図る目的で会社に損害を与えたかどうかが立件の要件となる。
特捜部が、16億円の入金を私的流用と立証できるかが今後の捜査のポイントになるだろう。
今回の事件は、海外メディアなど国際社会の関心が高いことが特徴だ。日本の刑事司法手続きのあり方にも批判の目が向けられている。逮捕後の長期勾留や、弁護人の取り調べへの立ち会いを認めない制度などだ。ゴーン前会長の逮捕は、最初の先月19日以降3回目となり、勾留はさらに長期化する。
10日の再逮捕は、最初と同じ金融商品取引法違反容疑だった。一つの事件を切り分けるような手法は、海外メディアには、長期勾留を招く一因に映ったようだ。裁判所が勾留延長を認めなかったのは、こうした批判を意識したとの見方もある。
勾留延長請求が裁判所に却下された直後の再逮捕で、検察への風当たりはさらに強まるかもしれない。特捜部は、こうした状況下であることを踏まえて捜査を進めるべきだ。