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(岩波新書・950円)
「運動史」の闇と光を追う
遠い記憶のなかの小学校の給食。びみょうな風景である。あまい思いと苦くてつらい思いが入り混じる。たいくつな授業が終わったと、はしゃいでコッペパンをほおばる男の子がいる。一方で全身を固くしてすわり、机の上の脱脂粉乳の入ったおわんをいつまでも悲しそうに見つめて涙ぐむ子どももいる。
一九七六年生まれの著者もまさにそうだという。悪名たかい脱脂粉乳こそ消え去っていたけれど、先割れスプーンをなめるのでいつも舌がヒリヒリしていた。袋づめの冷たい「ソフト麺」に閉口した。お腹(なか)がいっぱいなのに残せない雰囲気はプレッシャーだった。高学年になると楽しくなった。カレーやハンバーグの日は心おどった。飲んだ牛乳を鼻から出したり、冷凍みかんを一気食いする同級生の芸に笑った。
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