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2000年代前半のある日、JTB本社(東京都品川区)会議室で取締役会に出席していた志賀典人(68)は一本の電話を受けた。相手は、買収を申し入れていた国内のオンライン旅行会社(OTA)。「申し訳ないけど」「まあ当然ですね」。短いやり取りを交わし、会議室に戻った志賀は、買収に失敗したことを伝えるメモを当時の社長と会長に渡した。2人は言葉を発さなかったが、ホッとした表情を浮かべたように志賀には見えた。
1990年代、日本人の旅のスタイルは大きく変わった。それまではJTBなど旅行会社のパックツアーが主流だったのが、自ら航空券や宿泊を手配する個人旅行が増加した。その流れを加速させたのがインターネット時代の到来だ。2000年ごろには複数のOTAが台頭。JTBの取引先のホテルや旅館の一部がOTAのサイトを使ってネットで直接予約を受け付けるようになり、「無視できない存在」になった。
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