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東京へ ともに歩む

毎日新聞

【講道館杯全日本柔道体重別選手権】 女子57キロ級1回戦で敗れた松本薫=千葉ポートアリーナで2018年11月4日、宮間俊樹撮影

アスリート交差点2020

1%だから走る!! 「小野獣」にしかなれず=柔道・松本薫

 11月の講道館杯全日本体重別選手権は、1回戦で敗れました。来年の世界選手権(東京)代表の第1次選考となる試合でもあり、代表入りの可能性がなくなりました。世界選手権は2020年東京五輪代表選考で最も重要な試合。「1%でも可能性があれば目指す」と言っていた東京五輪の代表の可能性も0%になったと思っています。

     子育てと柔道の両立は難しかったと実感しています。夫婦ともに親が近くに住んでおらず、月に3回は子どもの病気などで急に練習を休まなければならないのが普通でした。練習不足から、勝負をかけた講道館杯も、スイッチの入り方が16年リオデジャネイロ五輪までとは違いました。

     弱虫な自分を畳に上げるために気合を入れている表情が「野獣」と言われましたけど、「野獣を作る」ことは疲れるし、大変です。講道館杯では「小野獣」にしかなれませんでした。今までのように調子が悪くても何とかしてやろうという気持ちが湧いてきません。1回戦で延長に入った瞬間、勝ったらもう1試合やるのか、しんどいなと思ってしまいました。その時点で「終わったな」と感じました。

     リオまでは自分の階級で若手が育っていなかったので、乗り越えるための壁になることが東京五輪を目指す理由の一つでした。今年の世界選手権では芳田司(コマツ)が優勝し、講道館杯の1週間前の練習では、ジャカルタ・アジア大会優勝の玉置桃(三井住友海上)を一回も投げることができませんでした。実力がついたことがうれしかったし、安心しました。そのことも講道館杯で「何が何でも勝ちたい」という思いが出てこなかった理由だと思います。

     講道館杯までの日々に悔いはありません。娘が生まれてからの柔道生活が一番幸せだったから。練習時間は貴重で、その分楽しかったです。

     講道館杯が終わってからは柔道の練習はせず、子育てに専念しながら休養しています。もう戦いたくないと思った時が引退する時だと思ってきましたが、今はゆったりとした日常がすてきだなと感じています。現役引退に気持ちは傾きつつありますが、もう少し時間をかけて結論を出したいと思います。=随時掲載(タイトルは自筆)


     Q 両立の原動力は

     子育てをしながら競技を続けるモチベーションを教えてください。陸上・山県亮太からの質問

     A 子どもがいると頑張れますね。歯が生えるとか成長すると、一番テンションが上がります。いいモチベーションになります。

     子育てをしていると、思い通りにいかないことばかりなので、柔道でもイライラしなくなり、気持ちは安定しています。私の場合は練習の質も高まりました。できるだけ子どもと一緒にいたいと思えば、練習で甘えている時間はありません。


     ■人物略歴

    まつもと・かおり

     金沢市出身。女子57キロ級で、2012年ロンドン五輪金メダル、16年リオデジャネイロ五輪銅メダル。16年秋に結婚し、昨夏に長女を出産。今年1月に本格復帰した。べネシード所属。31歳。