激動期の大学受験 どう乗り切る? 駿台教育研究所・石原賢一部長
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大学入試センター試験(2019年1月19、20日)まで1カ月を切った。私立大での入学定員管理の厳格化や、21年の大学入学共通テスト導入などもあり、大学受験は激動の時期を迎えている。その中で、入試はどうなるのか。受験直前の心構えなども含め、駿台教育研究所進学情報事業部の石原賢一部長に聞いた。【聞き手・中根正義】
入学定員管理の厳格化の影響? 早慶・MARCH・関関同立は減少か
--2018年度入試は、入学定員管理の厳格化による合格者数の絞り込みも加わり、私立大入試の難化が話題になりました。19年度の動向はいかがですか。
11月4日に実施した第3回駿台・ベネッセマーク模試によると、日東駒専(日大、東洋大、駒沢大、専修大)より下位の難易度レベルの大学では志望者が増えており、上位層がより安全な併願作戦を立てているようです。難易度が低い大学ほど、併願による受験料割引制度などを導入しているところが多く、今後はさらに志望者が増えると予想されます。
具体的にグループ別の志望者数の前年度対比指数(以下「指数」)でみると、早慶は87と減少。GMARCH(学習院大、明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)は88で学習院大が100と前年度並みである以外は、新設学部が2学部ある中央大でも92と減少、他の4大学は1割以上の減少です。関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)も90で新設学部がある立命館大以外の3大学はいずれも1割以上の減少です。このように難関大は、いずれもはっきりと減少傾向が見られ、近年の合格者数の絞り込みにより、慎重な志望動向になっています。
これに続く、日東駒専は88ですが、大学を取り巻く厳しい環境を反映して日本大が72と大幅減少。駒沢大は100で前年度並み、専修大は104でやや増加です。産近甲龍(京都産業大、近畿大、甲南大、龍谷大)は99とほぼ前年度並みです。
さらに続く、大東亜帝国(大東文化大、東海大、亜細亜大、帝京大、国士舘大)は104とやや増加しており、大東文化大109、帝京大105の増加が目立っています。関西の摂神追桃(摂南大、神戸学院大、追手門学院、桃山学院大)は109とはっきりと増加しており、特に追手門学院大は122、桃山学院大は117と大幅増加です。
なお、入学定員管理の厳格化の影響については、18年度の入試ほど厳しくはならないと見ています。明治大や法政大も、学部によっては入学者が定員を割り込んでいるところもあり、創価大や武蔵大、明治学院大など、18年度、合格者数を大きく絞り込んだ大学は、さらに大きく減らすことはないと見ています。
国立大医学部も志望者減!?
--国公立大の動向はいかがでしょうか。
志望者指数は97とやや減少傾向です。やはり、18歳人口の減少の影響と、私立大の合格者絞り込みに伴う難化の影響で、国公立大も弱気な志望動向が見られます。旧七帝大(北大、東北大、東大、名大、京大、大阪大、九大)に東工大、一橋大、神戸大を加えた難関10大学の志望者指数は96(前期96、後期94)です。その中で東大は前期103とやや増加しており、東大志望者については、18年度よりやや強気の志望動向となっています。他の9大学はすべて減少していますが、前期では特に一橋大が89、東工大が92、東北大が93と減少が目立っています。いずれも、一橋大は2年連続増加、東工大は3年連続増加、東北大は指定国立大となった効果による増加の反動の影響もあります。
東大は文科類、理科類ともに103と、わずかに増加しています。科類別では文1、文2は92と減少していますが、文3が120と大幅増加です。理科類は理1、理2は101と微増ですが、理3が139と大幅増加です。国立大全体を見ると、経済・経営・商学系、学際系、工学系が人気の一方、医・薬・農学系は不人気ですが、東大志望者ではちょっと異なった動向となっています。文科類は早慶の文系学部の合格者絞り込みを警戒して、比較的難易度の低い文3に流れており、理3は第1段階選抜実施予告倍率が4.0倍から3.5倍に厳しくなりますが、この影響はなく2年連続志願者減少への反動が見られます。
東工大は前期の指数が92で減少しています。東工大は19年度から入学時の所属が、これまでの「類」から「学院」に変更され、前期は学院別募集で第3志望まで認めることになります。後期は現在の7類が生命理工学院となりましたが、指数が91と減少しています。生命理工学院は前期も65と大幅減少で、生命科学系の不人気が影響しています。一橋大は、2年連続増加の反動もあり指数87で、4学部がすべて減少しており、特に商が83と大幅減少です。
京大は前期が95と減少しています。学部別では18年度、大幅志願者減となった教育(文系)は反動で107と志望者が増加しています。3年連続減少した理も反動から指数103とやや増加です。逆に、工は指数88で最も志望者が減少しています。ただし、理系学部は農を除いて志望者の成績レベルがアップしており、少数激戦の入試が予想されます。
前期日程のみ大阪大は、指数98と微減です。文系学部は、5学部すべてが増加で、人間科学は入試で2年連続増加の反動はなく107とさらに増加しています。理系学部では唯一基礎工が前年度大幅増加の反動はなく110と増加しています。一方、メディカル系の人気が低く、医(医)が81、医(保健)88、歯66といずれも大幅な減少です。
--筑波大や千葉大、熊本大など準難関とされる国公立大の志望状況や医学部医学科の状況はいかがですか。
やはり減少しています。前期は97のやや減少、後期は95の減少です。減少が目立つ中で、前期では首都大学東京が102、横浜市立大100と減少がなく、センター試験の科目負担が少ない学部や入試方式がある公立大への志向が見られます。
国立大の医学部医学科ですが、前期93、後期が90、全体で92と志望者減が顕著になっています。特に、前期では甲信越83、近畿85、東海91の減少が目立ちます。関東でも、前述した東大を除くと、今年度で志願者指数が63と激減した群馬大が105とやや増加している以外は、他の4大学は減少しています。中でも、第1段階選抜の通過倍率を約5倍から約2.5倍に絞る筑波大前期(一般枠のみ)は指数85と大幅に減少しています。また、18年度入試から東大理3が面接を採用したように、医師への適性を厳格に見ようという姿勢が強まっています。そうした傾向は、今後も続くでしょう。
--高大接続改革の一環として導入される大学入学共通テストを先取りする形で、本質を問う問題が増えています。この点に関し、何か対策は必要でしょうか。共通テストの動向も踏まえ、教えてください。
既に「知識・技能」に偏った問題は少なくなっています。センター試験で実用的な問題や会話文を絡ませる問題など、新しい共通テストで出題されることが予想される内容が先取りで出題されています。小手先のテクニックでは通用しない問題が多くなっています。しっかり対策を取る必要があります。
大学入学共通テストに関しては、文部科学省の学力調査を見ても、センター試験で英語リスニングが導入されてから、高校生のリスニング能力は大きくアップしました。ライティングやスピーキングも、民間試験を導入する効果は間違いなく表れると思います。国語の記述式も同様です。
心配なのは運用です。付け焼き刃で実施しても、高校の現場は混乱し、受験生は迷惑をこうむるだけです。きちんとルールを決めてからゴーサインを出してほしいですね。
本番前はスマホとの付き合い方に注意!
--入試本番に向け、直前に準備すべきことは?
19年度入試の大きな特徴は、センター試験の試験日が1月19、20日と遅いことです。しかも、国公立大2次(個別)試験の出願期間が月をまたいで2月になります。そうなると、私立大入試のシーズンと国公立大の最終出願を決める時期がオーバーラップしてしまいます。センター試験が終わったら、すぐに国公立大の2次試験対策や私立大対策に気持ちを切り替えられるかが一番のポイントになります。それを踏まえた計画を立て、それに沿って確実に学習していくことが重要になるでしょう。
--受験する上でのモチベーションは、どう維持すればいいでしょうか。
今まで培ってきた生活リズムを入試まで崩さないようにしましょう。インフルエンザ対策を含む健康管理にも気をつけてください。少しでも体調が悪い時は体を休ませる勇気も必要です。
スマートフォン(スマホ)との付き合い方にも注意したいですね。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)やゲーム、アプリなどの用途で使うのは要注意です。「昔テレビ、今スマホ」というくらい受験には大敵です。
また、インターネットによる出願が可能な大学が増えています。早めに各サイトにアクセスし、うまくできるかチェックし、つながらない場合や不明な点は大学に確認しましょう。学部や日程などを誤って出願してしまうことも多いので注意してください。
また、受験のために宿泊が必要な場合、観光地などを中心にホテルが取りづらくなっています。早めの予約を心がけてください。そのためにも、受験スケジュールを早めに決めることが重要でしょう。