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日本史上最悪の火山災害は1792年の雲仙・普賢岳(ふげんだけ)の噴火である。この噴火に伴う眉山(まゆやま)の大崩落で大量の土砂が有明海に突っ込み、島原と対岸の熊本を津波が襲った。「島原大変肥後迷惑(しまばらたいへんひごめいわく)」と呼ばれた惨害である▲津波の死者は島原で1万人、熊本で5000人にのぼった。津波に襲われた島原の城下では家の残骸から「助けたまえ」の声と念仏の声がわんわんと響き、哀れきわまりないありさまだった--当時の模様を伝える説(せっ)教(きょう)節(ぶし)はそう語る▲その51年前には、北海道の渡島大島(おしまおおしま)の噴火による津波が対岸に押し寄せ、約1500人の死者を出した。噴火による津波が日本でも多くの犠牲者を出してきたのを思い起こさせたのは、インドネシアのスンダ海峡で起きた津波だった▲日ごとに死者や行方不明者の数が増えてゆくジャワ島西部やスマトラ島の被災地である。津波の原因はスンダ海峡の火山島アナククラカタウの噴火に伴う山体崩壊と見られる。津波は何の前ぶれもなく沿岸のリゾート地などを襲った▲今年9月の地震と津波でも大きな被害にあったインドネシアである。地震による津波への警戒心は強い住民だが、今回はまったくの不意打ちとなった。ただこの火山は過去の噴火でも死者数万人を出す巨大津波を起こしたことがある▲同じく火山列島を国土とする日本人には、聞けば聞くほどに人ごとでない前兆なき津波の恐怖である。被災地への支援を通して得られた知見は、他日の「大変・迷惑」への備えに生かさねばなるまい。