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サンデー毎日発

国立大入試が変わる! 着々と進む大学同士の連合 やりたいことに目を向けて

統合に向け、合意書に署名した岐阜大の森脇久隆学長(左)と名古屋大の松尾清一学長=名古屋市中村区で2018年12月25日撮影

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 とかく大学入試の変更が話題となる「高大接続改革」だが、一方で主体的な学びを身につけた高校生を受け入れる立場となる大学も、統合や学部改組といった改革が急務だ。国立大の改革事例と受験生の対応について検証してみた。

     情報技術の飛躍的な発達やグローバル化の進展に伴い、産業構造や社会環境には大きな変化が見込まれる。そうした状況に対応できる人材の養成を目指し、高校教育と大学教育、そして両者を結ぶ大学入試を一体的、抜本的に変革する「高大接続改革」が進行中だ。

     高校教育では、これまで多くの学校で行われてきた、大学入試を前提とした“知識詰め込み型”の教育を改め、知識をいかに活用するかが重視されるようになる。そのために、「知識・技能の確実な習得」「知識・技能を基にした思考力、判断力、表現力」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を学力の3要素と位置づけ、双方向型の授業であるアクティブラーニングなどを通して、それらの力の育成が始まっている。

     学力の3要素を身につけた高校生を受け入れ、育てるのが大学の役目だ。その入り口となる大学入試は、単なる知識の再生に偏った入試から、筆記試験の導入などにより、思考力や判断力を見る入試に変わる。入試改革の中心に据えられたのが、センター試験に代わって実施される「大学入学共通テスト」で、2018年11月に最後の試行調査が終わり、21年1月の実施(同年4月入学)に向けた準備が進んでいる。

     大学自身の改革について文部科学省は、(1)各大学の役割・機能の明確化(2)経営力の強化(3)大学の連携・統合等――の3本柱を示している。

     (1)では「世界を牽引(けんいん)する人材」「高度な教養と専門性を備えた先導的な人材」「高い実務能力を備えた人材」といった、各大学が比重を置くべき人材養成のイメージを提示。各大学に対し、それぞれの強みや特色を明確化することを求めている。(2)は大学経営への学外理事の活用を促進するという内容。(3)では、国公私立の枠を超えた連携を可能にする「大学等連携推進法人(仮称)」の制度創設の検討などが示されている。

     大学改革の方向性が国によって示される中で、国立大では大学同士の連携・統合が進んでいる。駿台教育研究所・進学情報事業部長の石原賢一さんは言う。

     「国立大学は個々の強みを生かすために、統合を検討する大学が増えています。こうしたケースは過去にもあり、総合大学と医科系単科大学の統合が多くありました。事務経費の削減とともに、医学部と理学部または工学部などが連携することで、共同研究がやりやすい環境を作ることも目的でした」

    国立大学の統合

     総合大学と医科系単科大学の統合は、表「国立大学の統合」に挙げたように、02年に山梨大と山梨医科大が統合して山梨大に医学部ができたのを皮切りに、03年には福井大と福井医科大、島根大と島根医科大など7件の統合例がある。ちなみに滋賀大と滋賀医科大は統合していない。滋賀大に理工系学部がなく、共同研究のメリットがなかったからといわれる。

     それ以外では、筑波大と図書館情報大、九州大と九州芸術工科大、大阪大と大阪外国語大といった、母体となる総合大学が自ら持っていない学術分野で、単科大と統合するケースが見られる。

     こうした動きは受験生にも影響を与えた。入試問題が総合大学と共通化されることで難易度が上がったのだ。大阪大を例に取ると、同大の外国語学部になった大阪外国語大との間に入試難易度の大きな差があったため、統合前なら大阪外国語大に合格できた受験生の手が届かなくなった。筑波大の知識情報・図書館学類や九州大の芸術工学部も同様で、前身の大学よりレベルが上がっている。

     その大学統合・連携が改めて進みそうだというわけだが、今春報道で明らかになったのが、名古屋大と岐阜大の運営統合だ。名古屋大は東大、京大、東北大、大阪大、東京工業大とともに「指定国立大学法人」に指定されている。指定国立大学法人とは、文科省が国際的な競争環境下で世界の大学に伍(ご)していく大学として“お墨付き”を与えた大学だ。

     名古屋大は指定国立大学法人構想で「新たなマルチ・キャンパスシステムの樹立による持続的発展」を掲げる。複数の大学が集まって新たな国立大学法人を作り、その枠組みの中で、自立性を尊重しながら各大学の強みに応じた教育、研究を展開するという意味だ。岐阜大との統合は、こうした取り組みの一環と見られている。

     名古屋・岐阜両大学の具体的な統合方針は明らかにされていないが、今後の可能性について、駿台の石原さんに聞いてみた。

     「まずは法人統合から始まると思いますが、先々、名古屋大が研究大学として大学院を中心に据えた際、学部教育を岐阜大が受け持つなど、ドラスティック(抜本的)な改革の可能性も考えられます」

    遠隔地の大学同士の連携で学びが広がる

     法人統合の動きは他にもある。医工連携という観点から、静岡大と浜松医科大の統合による、新たな国立大学法人設置が準備されている。工学部がある静岡大・浜松キャンパスと浜松医科大を合わせた大学と、静岡大・静岡キャンパスを中心とした大学の2校の開校を目指し、協議が進められている。

     奈良教育大と奈良女子大は法人統合し、教養教育の充実と強化や教員養成の高度化を目指している。奈良先端科学技術大学院大と奈良工業高等専門学校の協力のもと、工学系共同教育課程を設置し、工学学士の授与も検討されている。代々木ゼミナール教育総合研究所・主幹研究員の坂口幸世さんは言う。

     「少子化の中で国立大が統合する意義は、強みを持ち合って足腰を強くすることにあります。統合の成果は長期的に見る必要がありますが、相互のリソース(資源)を持ち寄ってのカリキュラム改革や、教育、学生サービスが向上するのかどうかに注目しています」

     以上紹介した例は、近くにある大学同士の統合だが、北海道では同じ道内とはいえ、距離的に遠い小樽商科大、北見工業大、帯広畜産大の3校の運営統合計画がある。特色ある教養科目の遠隔講義システムによる共同受講や、大学間で短期滞在型体験学習などが検討されている。遠隔地の大学間の統合の方向性について、駿台の石原さんは、こう話す。

     「遠方の大学でもIT環境があれば連携できます。地方では、家計の問題で地元から出られない子どもがいます。北海道の3大学のケースなら、北見工業大に小樽商科大のサテライトキャンパスを開設して遠隔授業を行えば、商学部を持つ大学がない北見で商学を学べます。学びたいのに学べない子どもを救済するためにも、こうした取り組みを望みたいですね」

     大学の連携・統合には地域連携という目的もあり、そうした流れから学部を改組する大学が数多くある。国立大はこれまで経済学や工学など、従来型の学部編成が多く、組織変更に積極的ではなかった。最近では、宇都宮大・地域デザイン科や福井大・国際地域、鳥取大・地域、宮崎大・地域資源創成など、地域貢献を主目的とした学部を新設する大学が増えている。代ゼミの坂口さんは言う。

     「国立大は日本全体を支える人材養成を行う一方、特に地方では、地元貢献が強く求められています。これまで、地元に目を向けていなかった大学もありましたが、地域創生系の学部を設置することにより、足元を見つめながら地域で役立つ教育・研究が行われるなら、地方が変われると思います」

     具体的な動きに注目すると、高知大・地域協働のホームページのトップには「『協働』を通じて地域社会の再生・発展に挑戦する全国初の学部です」という文字が躍る。学生の力を地域の再生と発展に生かす教育研究を通して、地域活性化の中核拠点になることを目指している。佐賀大・芸術地域デザインの芸術表現コースは「美術・工芸」と「有田セラミック」の2分野で構成される。地元の名産品である有田焼と、表現・科学・経営といったアカデミックな教育・研究分野の融合で、地元の産業の発展に貢献する役割を担っている。

     「地域重視」の学部が設置される一方、「世界を牽引する人材養成」に力を入れる大学として、グローバル系学部の設置が進む。九州大・共創や千葉大・国際教養、福井大・国際地域、山口大・国際総合科などが設置され、受験生の選択肢が広がった。

     このように、国立大では大学間の連携や学部新設を中心とした改革が進んでいる。

     「今後、大学間連携が進むことは間違いありません。法人統合までいかなくても、共同研究や単位互換などは活発になるので、大学入学後の学びや研究の広がりについて調べておくといいでしょう。特に、学問領域が限られる地方の受験生は、連携により新たな学問分野が生まれる可能性があるので要注目です」(駿台の石原さん)

     現時点の模試などの結果を見ると、19年度入試(19年4月入学)に臨む国立大志望者は増えておらず、国立大全体の志願者は8年連続の減少が見込まれている。「安定した入試」といえるからこそ、より良い大学に進学するために志望校の改革状況について調べておきたい。【大学通信・井沢秀】

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