利用者と連絡する退職代行業者「EXIT」の社員ら=東京都新宿区で21日午後3時14分、遠藤浩二撮影
利用者と連絡する退職代行業者「EXIT」の社員ら=東京都新宿区で21日午後3時14分、遠藤浩二撮影

 仕事を辞めたいのに言い出せない人に代わり、会社側に意思を伝える「退職代行」と呼ばれる新しい有料サービスが人気を集めている。今夏からインターネットで急速に広まり、ブラック企業やパワハラに悩む若者らが利用。業者は30ほどに増えているが、弁護士らは「無資格で法律業務を行う非弁活動に当たる」と反発している。

 「あまりにすんなり辞められて驚いた」。関東地方の介護施設で正社員として働いていた男性(30代)は、退職代行を利用して今年11月末に会社を辞めた。

 職場の雰囲気になじめず朝起きるのがつらくなり、微熱が続いて通院。人事に相談したが「来てもらわないと困る」と言われ、辞めたいと言えなかった。

 そんな時にネットで退職代行を知り、無料通信アプリ「LINE(ライン)」で連絡。依頼後は一度も出社せず、会社へは電話もしなかった。業者の指示で退職届を郵送し、私物は宅配便で届いた。男性は「駆け込み寺のようで感謝している」と振り返った。

 退職代行は、依頼を受けると利用者の会社に電話をかけて退職の意思を伝える。連絡はすべて業者が電話で行い、保険証や離職票も郵送でやりとりする。料金の相場は5万円程度。退職願を出しても引き留められたり、会社とのトラブルを恐れて言い出せなかったりする20~30代の若者の利用が多いという。

 同種の業者は約30あり、先駆けは2017年5月に始めた「EXIT(イグジット)」(東京)。共同代表の新野俊幸さん(29)は大手携帯会社の社員だったが、上司から頻繁に怒鳴られ、休みも満足に取れなかった。退職を申し出ると同僚から白い目で見られた経験から代行業を発案し、自宅で起業した。

 今年7月にEXITのサービスがツイッターで広まり、依頼が殺到。月1000件ほどの相談があり、うち8割はラインだ。これまでに約1600件の退職が成立。製造業やIT企業が多く、飲食業の店長や大手自動車会社の社員もいたという。

 今では従業員8人を雇い、新宿にオフィスを構える。もう一人の共同代表、岡崎雄一郎さん(29)は「辞めるのは次の挑戦への第一歩。気兼ねなく退職できる社会にしたい」と話す。【遠藤浩二】

若手弁護士らの新たな収入源に

 退職代行サービスには弁護士も次々と参入し、「労働事件のプロ」「24時間365日対応」などとネットで大々的に宣伝している。

 急増したのは、サービスが話題になった今年7月以降。若手らの新たな収入源にもなっており、ある弁護士は「パイの奪い合いだ」と打ち明ける。

 今月、専用サイトを作った嵩原安三郎弁護士(大阪弁護士会)は「これほどニーズがあると思わなかった。弁護士なら残業代の未払いなど多様な交渉ができる」と話す。

 ただ、代行業については違法という指摘も上がる。弁護士法は、資格がないのに法律業務を行う非弁活動を禁じているためだ。

 非弁活動に詳しい深沢諭史弁護士(第二東京弁護士会)は「退職は労働契約を解除する行為。代行業は法律業務に当たる可能性が高い」と指摘する。

 EXITは「顧問弁護士に助言を受けている。金銭交渉はせず、無資格でできる業務だ」と反論する。【遠藤浩二】