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教育改革シンポジウム

第11・第12回高大接続教育改革シンポ「統合・再編」へ動き出す大学 入試で問われる力とは何か

第12回高大接続教育改革シンポジウムのパネルディスカッションで議論する(奥右から)文科省の玉上、私立大学協会の小出、筑波大の永田、駿台教育研究所の石原、毎日新聞の中根の各氏=東京都千代田区の毎日ホールで2018年11月17日

 現在の大学は世界との激しい競争の中で短期的な成果を求められている。一方で、教員の数は減少し、少子化の影響で学生募集に苦しむ大学もあり、大学を取りまく環境は厳しい。高大接続改革も進んでいく中で、大学は今後どうなっていくのか――。駿台予備学校、大学通信、毎日新聞社が11月17日、東京・竹橋の毎日ホールで共催したシンポジウムでは、大学の統合、再編のあり方から、グローバル化による入試への影響まで、文部科学省大臣官房審議官(高等教育、高大接続担当)の玉上晃、日本私立大学協会事務局長の小出秀文、筑波大学学長の永田恭介、駿台教育研究所進学情報事業部部長の石原賢一の各氏が語り合った。コーディネーターは毎日新聞社大学センターの中根正義センター長。【構成/大学通信・松平信恭】

     ――情報通信技術の進展で、第4次産業革命ともいわれる社会の変化がグローバル化とともに起きており、今まであった仕事がなくなる、身近に暮らす外国人が増えるなどしています。日本では少子高齢化が急速に進み、激動の時代を迎えています。

     永田 世界経済では製造業の地位が相対的に低下し、数理・情報の力を基盤としたサービス業が成長を牽引(けんいん)しています。産業のモデルが労働集約型から知識集約型に変わる中で、日本は高度成長期の成功体験から「ものづくり立国」の発想から脱しきれず、世界から取り残されています。過去と同じやり方を続けても昔のような成功はなく、意識を変える必要に迫られています。

     石原 周りの大人が古い意識のままでは、今の若者たちの将来はかなり危ないのですが、一般にはあまり知られていないと感じます。社会構造を変えていける若者をつくらねばなりません。

     小出 これまでの大学は、画一的、同質な人材を育成して社会に送り出すことで、日本の成長を支えてきました。これからは、社会のフロントランナーやイノベーターをつくる教育へ、大学の役割が変わっていきます。

     玉上 高大接続改革が教育や入試を変えようとしているのは、変化に対応できる力を身につけてもらうためです。少ない人数で社会を支えるために、高等教育には一人一人の付加価値を高めることが求められています。

     ――18歳人口の減少が進むことで、20年以内に大学が200校以上なくなるとの見方もあり、生き残りをかけた大学の統合や再編が進みそうです。文科省が2001年に策定した「遠山プラン(※)」が出された後にも、大学の統合、再編の動きがありましたね。

     玉上 九州大は03年に九州芸術工科大と統合しましたが、何かに困って統合したのではなく、不足している部分を補い合うのが目的でした。たとえば自動車工学で乗り心地の良い車を開発するためには、工学以外にもデザイン、感性といった分野の知見が必要なのです。神戸大と神戸商船大の経営と流通という強みを生かした統合もありました。そして今、小樽商科大、帯広畜産大、北見工業大が進めている、経営、農業、工業を組み合わせて相乗効果を狙った統合など、それぞれの強みを生かした事例があります。

     石原 00年代初頭の統合はそうした面が強かったですが、これからは切羽詰まった大学を「救済」するための統合も出てくるでしょう。今後は「のみ込まれて」しまう大学が出てくることを危惧しています。

     小出 一般的に私立大は学生からの学納金に経営を依存しており、とりわけ地方に苦しい大学が多くあります。私立大は公的補助が少なく、国公立大との格差是正を考えていく必要があります。地方の学生にも学ぶ機会を保障するために、第三者が苦しい大学に知見を提供するなど、健全経営を目指すための取り組みも大切です。

     永田 大学統合の目的は教育や研究の機能を高めることであり、これ以外は考えられません。単に経営の悪化した大学を「救済」するための連携や統合は経営的にも学問的にも意味がないので、大学自身が選択することはないでしょう。

     玉上 統合や再編は、大学が日常的にさらされている「競争」に勝つために、学問的な発展や、人員・設備のスケールメリットを目指して行われるものです。人口減少に合わせて大学の数を減らすという単純な話ではありません。

    大学生になるとなぜ勉強しなくなるのか

     ――少子化で大学進学者が減ると大学の研究力はどうなりますか。

     小出 突出した研究を生み出すためには高等教育の裾野の広さが必要です。全学生の7割以上が学び、多層な教育を提供している私立大が果たすべき役割は大きいのです。幅広い学生に学びを保障していく方法を考えなければなりません。

     永田 研究の世界には国境がありません。グローバルな人材獲得競争の中で外国人留学生を獲得し、日本人学生の減少分を補うことは可能です。むしろその前提として、知識集約型社会を支える人材がどれだけ必要かを考えるほうが重要な問題です。

     玉上 大学は世界を相手に戦っています。海外の大学と戦いながら能力の高い学生を獲得し、世界に羽ばたいてもらう。それこそが、少子化のなかで教育力や研究力を高めるための手段であり、結局は日本のためになります。

     永田 日本の大学には日本国民の税金が投入されているので、外国人留学生を増やすことに懸念を抱く方もいます。しかし、留学生をしっかりと教育し、日本に貢献してくれる人材に育てられれば、税金を投入した意義は大いにあると言えます。

     ――子どもたちもグローバル化への対応が必要になります。

     玉上 ディベートをしてもほとんど話さず、プレゼン力や語学力が低い今の日本の学生では、国際競争に勝てません。留学資金を提供する学内セレクションで、留学生のほうがたくさん受かってしまうなど、外国の学生に比べて日本の大学生はあまりにも勉強しません。

     石原 高校や予備校の時は入試に向けてよく勉強するのに、大学で勉強しなくなるのは、日本の企業が学力を求めず、欧米と違って管理職登用に修士号も必要とされないからではないでしょうか。理系の上位層の多くが医師を目指すのはインセンティブがあるからです。大学で勉強したことがインセンティブになる社会を作っていく必要があります。

     小出 私立大学協会ではASEAN(東南アジア諸国連合)の国と包括協定を結んで交流事業を進めています。海外からの留学生の教育への熱意は非常に強いものがあります。大学だけでなく、高校段階から留学生を積極的に受け入れることがあってもいいと思います。

     玉上 留学を義務化する学部の新設が続くなど、外国へ行く大学生が増えているのは良い傾向です。ただ、偏差値が高いだけでは社会で戦っていけません。高大接続改革で記述式問題を導入するように、考えて解く入試にしていくのも大切だと考えます。

     小出 改革は学力上位層だけを狙うのではなく、多様な学力層の高校生と大学との接続を目指すことが求められます。これまでの入試は学生の「選抜機能」に重点を置いてきました。今後は、大学が学生の可能性や人間性を評価する「マッチング」を重視した入試が大事になります。地方や中小の厳しい大学は、自らの特色を打ち出し、そうした入試に軸足を移さなければなりません。

     石原 大学がマッチングの良い学生を探すために、入試を変えるのはとても良いことです。単なる知識偏重からの脱却と捉えられないためにも、そのことを社会に発信していくのが大切です。

     ――専門職大学ができ、研究や地方創生に特化する大学も現れるなど、大学の機能分化が進んでいます。個性を生かした人材育成のために、連携、統合も視野に入れながら、大学の魅力を高めていくことが求められています。

     永田 それぞれがアイデンティティーを発揮して、教育や研究の強みをより強くする選択肢として、連携や統合を進めることが大切です。そのうえで、各大学が持つ「レガシー(遺産)」を生かして、志のある学生をいかに育てるかが重要です。

     石原 各大学が特徴を分かりやすく打ち出す努力をして、足りないところは連携すればいいと思います。今は通信が発達しているので、東京と地方の大学が連携することも可能です。枠組みは柔軟に考えられます。地元で高等教育が受けられなくなるのは困ります。首都圏からでも行きたいと思える魅力ある大学を作れれば、日本の高等教育全体がもっと活性化するのではないでしょうか。

    大学入試改革について意見を交わしたパネルディスカッション。左から追手門学院大の志村、関西学院大の尾木、文科省の山田の各氏=大阪市西区南堀江1の駿台予備学校大阪南校で2018年11月10日

    入試改革のもう一つの課題 「主体性」をどう測る!?

     高大接続改革によって今よりも入試における比重が高まる「主体性評価」をテーマとするシンポジウムが11月10日に大阪で行われた。文科省大学入試室長の山田泰造、関西学院大高大接続センター次長の尾木義久、追手門学院大アサーティブ課長の志村知美、大阪府立北野高校校長の恩知忠司、駿台教育研究所の石原賢一の各氏がパネルディスカッション(コーディネーターは大学通信・安田賢治常務)。この中で調査書の見直しによる「高校時代の活動に関する記載欄」が拡充されることで、大学が合否判定で「生徒の主体性」などの多様な力を評価するようになり、就職活動と同様に大学と受験生の「マッチング」重視の入試に変わるとの指摘があった。

     主体性評価において活用が期待されるのが「JAPAN e-ポートフォリオ」だ。高校時代の活動を記録するツールで、入試だけでなく高校教育への活用も視野に文科省の実証実験事業として研究開発が進む。この事業は2019年3月に終了するが、後継事業の実施についても言及があり、今後、同ポートフォリオが主体性評価の中心的役割を担っていくことが示された。

    ※遠山プラン=「国立大学の構造改革の方針」のこと。国立大の再編・統合、民間的経営手法や競争原理の導入を目指した。

    *週刊「サンデー毎日」2019年1月6・13日合併号より転載

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