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社説

次世代の巨大加速器 国内誘致には課題が多い

 宇宙誕生直後の高エネルギー状態を作り出し、物理法則の解明を目指す次世代の巨大加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の国内誘致に慎重な見解を日本学術会議がまとめ、文部科学省に伝えた。

     ILCは世界の物理学者らが国際協調で計画を進めている。建設費約8000億円、運営費は年間約400億円とされ、誘致国がその半額程度を負担することになる。

     学術会議は、想定される科学的成果が巨額の費用負担に十分見合うか疑問があると指摘。建設時や運転時の安全性や、海外との費用分担が不明確な点も懸念材料だとした。

     学術会議は日本の科学者を代表する機関であり、指摘はうなずける。政府は近く誘致の是非を決めるが、見解を重く受け止めるべきだ。

     ILCは、地下約100メートルに長さ20キロのトンネルを掘り、その中で電子などを衝突させる装置だ。質量の源とされるヒッグス粒子の性質を詳しく調べ、宇宙の謎に迫るという。

     ILC計画に学術的意義があることは確かだ。成果が上がれば、ホスト国日本の評価も高まるだろう。

     一方で、巨額の予算がILCに集中投資されると、他の研究分野の予算にしわ寄せが及ぶ恐れがある。

     日本の研究者らは2013年、国内の建設候補地を北上山地(岩手・宮城両県)に一本化した。

     誘致推進側には、東日本大震災からの復興名目など、通常の科学技術予算とは別枠で建設費を賄うことを求める意見もある。地元には経済波及効果を期待する声も根強い。

     だが、学術会議の議論では、別枠であっても国民の税金が原資となることに変わりはなく、経済波及効果も限定的だとされた。ILCに導入予定の機器には開発のめどが立っていないものもあり、計画が予定通り進むかも実は不透明だという。

     こうした点を踏まえれば、ILCの国内誘致を進めるには、課題が多いと言わざるを得ない。

     近年、日本の研究力の低下が指摘されている。ILCの誘致は、日本の科学界を活性化するという意見もある。だが、ビッグプロジェクト頼みでは、問題の根本的な解決にはつながらない。科学技術の振興を図るなら、多様な研究分野に、バランスよく資金を割り振るべきだ。

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