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2007年にスタートした「だいじょうぶ」キャンペーン(同キャンペーン実行委員会主催)は、「安心・安全な地域づくり」を目指し、さまざまな活動を展開している。中でも交通の安心・安全は最も日常的な問題だ。手軽な移動手段である自転車も、乗り方を誤れば死亡事故につながる。自転車との正しいつきあい方について、改めて考えたい。【上杉恵子】
スマートフォンの画面を見ながら、音楽を聴きながら、電話をしながらといった自転車の「ながら運転」による深刻な事故が次々に起きている。自転車事故の総数は減少傾向にあるものの対歩行者事故は増加し、加害者に高額の賠償を命じる判決も相次ぐ。自転車に対する社会の目は厳しくなっている。
「15年前は、自転車はエコで健康的と受け止められていた。それが今や迷惑扱いされたり、時に脅威にさえ捉えられたりしている。自転車をあまりにでたらめに使ってきた結果だ」。毎日自転車通勤する「自転車ツーキニスト」で、自転車の普及・啓発に取り組む「自転車の安全利用促進委員会」委員の疋田智さんは憤る。
道路交通法が1960年に制定された時、「自転車は車道走行」と定められた。しかし、70年の改正時に歩道走行を例外的に容認。これが一般化し、11年に警察庁が「自転車は原則車道走行」と改めて通達するまで放置された。疋田さんは「歩道走行によって自転車が歩行者と誤解され、車両としての責任感が薄れた。その結果、車体も安価で粗悪なものが増えた」とみている。
同委員会委員で自転車ジャーナリストの遠藤まさ子さんは、3人の子育てに自転車を活用してきた。「かごが大きいといった利便性やデザイン、価格に目が行きがちだが、自分と子ども2人、荷物で荷重が100キロを超えることを考えると、強度と安定性が大切だと気づく」と、慎重な自転車選びを呼びかける。
米、仏、英では安全基準を満たさない自転車の販売が禁止されているが、日本には実効性のある公的基準が存在しない。疋田さん、遠藤さんがともに薦めるのは、自転車協会が定める約90項目の基準をクリアした認証「BAAマーク」、もしくは製品安全協会による適合証「SGマーク」がついた自転車だ。「マークのない安い自転車も外観は同じように見えるが、耐久性や精度がまったく違う」と疋田さんは言う。
自転車本体だけでは安全は確保できない。08年の道交法改正で13歳未満はヘルメット着用が保護者の努力義務とされたが、疋田さんは「大人もヘルメットをかぶり、フラッシャー(点滅ライト)、バックミラーを装着して、必ず左側走行を」と訴える。また遠藤さんは「親による自動車での送り迎え頻度が高くなっているので、子どもが自転車に慣れる機会を失い、運転が下手になっている。実態に即した講習が必要だ」と指摘する。
一方で、自転車道の設置が進んだり、駐輪場が増えたりするなど、自転車を活用できる環境は少しずつ整いつつある。「しっかりとした準備と安全な運転で、自転車の楽しさをぜひ味わって」と2人は声をそろえる。
小学生が起こした自転車事故に神戸地裁が2013年、9521万円の賠償命令を下したことをきっかけに、自転車保険が注目されている。兵庫県は15年、全国に先駆けて自転車の保険加入を義務づけ、追随する自治体も増えている。
日本損害保険協会業務企画部の奥英昭課長は「新たに契約する前に、既に入っている保険の内容を確認してほしい」と話す。自動車保険や家屋の火災保険に入っている場合、特約として個人賠償責任保険に加入していれば、自転車事故で加害者となった場合もカバーされる。同居する親族に加え、別居でも未婚の子どもは補償対象だ。
一方、自分自身のけがに対する補償は別途、傷害保険への加入が必要となる。
いずれの保険も未加入の場合、コンビニや携帯電話で手軽に入れる自転車保険が便利だ。被害者、加害者どちらになった場合も補償対象となる商品が多く、保険料も年間数千円程度だ。
また、自転車を購入した際に、日本交通管理技術協会による「TSマーク」が貼られている場合には、傷害補償と賠償責任補償(一部には被害者見舞金も)が付帯されている。1年ごとに自転車を販売店に持ち込み、車体整備のうえ保険を更新する仕組みだ。
奥課長は「保険証券が見つからなかったり、家族に聞いても分からなかったりした場合は、保険を契約した代理店に問い合わせを。補償限度額が十分かどうかの確認も忘れずに」と注意を促している。
交通安全の実現には、自動車の正しい走行が欠かせない。トヨタ自動車は社会貢献の一環として、啓発活動に力を入れている。
富士スピードウェイ(静岡県小山町)の敷地内にある「モビリタ」では、運転実技講習を実施している。滑りやすい路面での運転や、時速100キロ走行時のフルブレーキといった危険な場面を安全に体験することにより、安全運転の大切さを実感できる。企業や団体での利用がメインだが、土日、祝日は一般向けに総合トレーニング(1万3650円から)を開講している。
同社のテーマパーク「メガウェブ」(東京・お台場)の試乗コースでは、レベルに応じた助言をマンツーマンで受けられる。衝突被害軽減ブレーキや踏み間違い時サポートブレーキなどの機能を備えた「セーフティー・サポートカー」(サポカー)の講習といったプログラムも今月からスタートした(いずれも300円)。
各地のイベント会場などでも、出張による啓発活動を展開。9月に東京・上野公園で行われた交通安全体験教室(警視庁主催、トヨタ自動車、「だいじょうぶ」キャンペーン実行委員会協力)では、サポカーの同乗体験や死角確認などを実施し、公園を訪れた多くの人々が参加した。
歩行者に対する安全啓発も、活動の柱としている。急な飛び出しの危険を教えるオリジナルの紙芝居と絵本を幼稚園や保育園に贈呈する取り組みは、今年50年目を迎えた。
同社社会貢献推進部の久世裕正・東京グループ長は「自動運転が実現しても、ドライバーが果たすべき役割はゼロにはならない。事故防止機能が発達したからこそ、頼りすぎたり過信したりしないようにしてほしい」と、活動の意義を強調する。
「だいじょうぶ」キャンペーン実行委員会
(会長=野田健・元警視総監、元内閣危機管理監、原子力損害賠償・廃炉等支援機構副理事長/事務局:毎日新聞社)
全国防犯協会連合会、全日本交通安全協会、日本消防協会、全国防災協会、日本河川協会、日本道路協会、都市計画協会、全国警備業協会、日本防犯設備協会、日刊建設工業新聞社、ラジオ福島、毎日新聞社
内閣府、警察庁、文部科学省、国土交通省、消防庁、海上保安庁、東京都、NHK
JR東日本、セコム、東京海上日動、トヨタ自動車、みずほフィナンシャルグループ、三井不動産
地域安全マップ協会、プラス・アーツ、情報セキュリティ研究所
「だいじょうぶ」キャンペーンホームページ http://daijyoubu-campaign.com または「だいじょうぶ」キャンペーンで検索
■ことば
犯罪や事故などの「こわいもの」から子どもやお年寄りを守り、自然に「だいじょうぶ」と声を掛け合える社会を目指す運動。ロゴマークは、「行政」「企業・団体」「市民」の三つの輪をかたどり、安心安全の輪を大きくしていきたいという願いを込めている。
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