冷却スプレーを使用後、シャツに火が付いてしまった事故の再現写真=NITE提供
山本紀子 毎日新聞 生活報道部長
スプレー缶が原因でおきた北海道札幌市の爆発事故にはびっくりしましたね。でも人ごとではありません。燃えやすいガスを使ったスプレー缶は、身の回りにあふれています。蚊をやっつける殺虫剤、汗のにおいを抑える消臭スプレー、雨をはじく防水スプレー……。いずれも火に近づけると危険です。缶をよく見てみると赤い字で「火気と高温に注意」と書いてあります。
札幌の事故では、部屋の中で消臭スプレー約120本を噴射し続け、その後に湯わかし器のスイッチを入れたところ、大爆発が起きてしまいました。やったのは、マンションや家を貸す不動産店の店長。消臭スプレーを大量に捨てなくてはならず、むちゃなことをしたようです。
え、そんなバカなことはいくら小学生でもしない? そうですね。
でもスプレー缶から出たわずかなガスが原因でおきた事故はたくさんあるのです。たとえば2014年、神奈川県の男性がふろ釜のガスに火をつけたとたんに、爆発が起きてけがをしてしまいました。別の部屋で使っていた殺虫剤から出たガスがふろ場に流れ込み、引火したのです。15年には愛知県でガスファンヒーターの前においていたスプレー缶数本が破れ、女性が大けがをしました。
生活用品の事故情報をあつめる独立行政法人の製品評価技術基盤機構(NITE)によると、13~18年度にスプレー缶による事故は27件あり、うち22件が火事でした。スプレーをまいた時に出たガスは、ガスコンロや換気扇から出るごく小さな火花に反応して、爆発をおこすのです。機構の担当者は、「スプレー缶を使ったら空気を入れかえ、換気がすむまでガスや掃除機を使わないこと。暖房の近くにスプレー缶をおかないこと。缶の中身が残ったら、外の風通しのよい場所で中身を出し切って捨てること」と呼びかけています。
食べ物やファッション、子育て、介護を担当。教育担当の時は、各地の小中学校で子どもや先生を取材。趣味は黒人演奏者のジャズを聞くこと。苦手はスマホ操作。1966年東京都生まれ。