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認知症 行方不明の妻を捜して 「なぜ1人で行かせたのか」後悔の念やまず

5月に行方不明になった時と同じバーバリーのブラウスを着た小川和子さん(80)。身長156センチ、やせ形。認知症のため自分の名前を言えない可能性があり、旧姓の「坂井和子」と言うこともある。情報は神奈川県警麻生署生活安全課044・951・0110まで=家族提供

 元経済誌編集長、小川益宏さん(83)が、今年5月に川崎市麻生区の自宅を出たまま行方が分からない認知症の妻を捜し続けている。結婚して58年連れ添った和子さん(80)はいつも明るく、自分を支えてくれた。1月1日は必ず家族で祝った妻の誕生日でもある。小川さんは妻に関する情報と帰りを待っている。【銭場裕司】

今年5月に川崎市麻生区の自宅から行方不明になった小川和子さん(80)。右は夫の益宏さん(83)=家族提供

「帰って来られないなんて」

 「どうして1人で行かせてしまったのか」。小川さんは妻が行方不明になった5月21日のことを何度も思い返して悔やむ。午後2時ごろ、「お茶がないから買ってくるね」と声をかけてきた和子さんに付いていくべきだった。

行方不明になった妻和子さん(80)を捜す小川益宏さん(83)。毎日、和子さんの写真に話しかけている=川崎市麻生区の自宅で2018年12月19日午後2時ごろ、銭場裕司撮影

 その日は老人ホームのケアマネジャーが自宅に来て、妻の入居について話し合う予定だった。妻が買い物に行こうとした店は歩いて2、3分の場所にある。数日前にも1人でミカンを買って帰って来ていた。「老人ホームの話を本人に聞かせたくない思いと、数日前にも行っていたことが頭をよぎった。まさか帰って来られなくなるなんて……」

家族で支えた穏やかな暮らし

 2人は1957(昭和32)年に勤めていた会社で出会った。3年後に結婚。3人の子どもに恵まれた。小川さんは出版社に転職して、1897年創刊の経済誌「実業の日本」(2002年休刊)の編集長などを務めた。定年後に新しく出版社を設立すると、和子さんが経理や総務を支えてくれた。苦労もしたはずだが、妻は明るく新しい人たちとの出会いを楽しんでいた。

今年5月に川崎市麻生区の自宅から行方不明になった小川和子さん(80)=家族提供

 和子さんは朝5時ごろに起きて散歩するなど活発で、街頭で募金を見かけると必ず協力をするなど優しかった。認知症の症状が表れたのは5年ほど前から。「ご飯食べる?」と同じ話を繰り返すようになり、のちにアルツハイマー型認知症と診断された。

 ある夜には自宅にいるのに「家に帰りたい」と言う。小川さんは一緒に家を出てバスで最寄り駅まで行ってから声をかけたという。「きょうはもう遅いからまた明日にしようか」「そうだね」。認知症になっても、家族の支えで穏やかな暮らしが続いていた。

今年5月に川崎市麻生区の自宅から行方不明になった小川和子さん(80)。左は夫の益宏さん(83)=家族提供

「妻につながる情報を」

 発症したあと、2人で通ったのが童謡を歌うサークルだ。「さっちゃん」「春よ来い」「みかんの花咲く丘」。小川さんは楽しそうに歌う姿を見られることがうれしかった。隣に妻がいない今、同じ童謡を聴くだけで涙が止まらなくなる。

今年5月に川崎市麻生区の自宅から行方不明になった小川和子さん(80)=家族提供

 「和子さん、おはよう」「行ってくるね」。小川さんはリビングのピアノの上に置いた妻の写真に何度も話しかける。1万枚以上のチラシを配り、近くの公園や空き家もくまなく捜したが、行き先につながる手がかりはない。小川さんは「少しでも妻につながる情報があれば教えていただきたい」と願っている。

認知症の行方不明は年1万5800人

 2017年に認知症やその疑いが原因で行方不明になったとして、警察に届け出があった人は1万5863人。過去最多を更新している。無事に見つかるケースが多いものの、和子さんのように行方が分からないままの人もいる。以前からの届け出分を含め、17年中に死亡が確認された人は470人いた。

 和子さんは身長156センチ。行方不明時はカーキ色のバーバリーのブラウス、黒色のスカートを身につけ、黒色のPRADAの肩がけポーチを持っていた。自分の名前が言えない可能性があり、旧姓の「坂井和子」と言うこともある。情報は神奈川県警麻生署生活安全課(044・951・0110)まで。

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