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社説

国会のこの1年 首相の下請けが強まった

衆院本会議で施政方針演説をする安倍晋三首相。奥は大島理森議長=川田雅浩撮影

 「国民の負託に十分に応える立法・行政監視活動を行ってきたか」--。大島理森衆院議長が、こんな異例の談話を発表したのは通常国会終了後の今年7月末だった。

 森友学園問題で財務省が手を染めた決裁文書改ざんなどに対し、三権の長の一人が「民主主義の根幹を揺るがす問題」と言い切って政府に猛省を促す一方、それに国会がきちんと対応できなかった危機感を与野党議員に問いかけたものだった。

 だが談話が、その後生かされなかったのは、先の臨時国会で安倍晋三首相ら政府と与党の自民、公明が短い審議時間で強引に成立させた改正入管法を見れば明らかだ。

 結局、国会の空洞化が一段と進んだ1年だったと言うほかない。

内閣がいびつに突出

 森友学園問題が発覚したのは昨年2月。そして安倍首相や妻昭恵氏らの名が記された部分の削除等々、財務省が文書改ざんを認めたのは今年3月だった。この間、国会は偽りの文書を基に質疑が続き、昨秋の衆院選も行われたということだ。

 その後、財務省は改ざんに関する調査報告をまとめ、国会でも野党の追及が続いたものの、肝心の「なぜ値引きされたか」「なぜ改ざんしたか」の疑念は今も解明されない。

 麻生太郎財務相は国会と国民を欺いた改ざんの責任を取ることなく続投し、首相も「自分も妻も無関係」と言い続けるだけで説得力のある説明はない。憲法が記す衆参両院の国政調査権が、いかに弱いものかを知らしめてしまったと言ってもいい。

 国会を「国権の最高機関」と明記している憲法に貫かれているのは、立法、行政、司法が相互に抑制し合い、バランスを保つことで権力の乱用を防ぎ、国民の権利と自由を保障する三権分立の秩序と原則だ。

 ところが安倍首相の「1強体制」が続く中、内閣の力がいびつな形で突出し、国会はもはや内閣の下請け機関に成り下がっている。

 言うまでもなく、国会を軽視する安倍首相の責任が一番重い。だが議院内閣制の下、与党は内閣を支えると同時に、その内閣を厳しく監視・チェックするのも責務のはずだ。国民の代表という誇りを自民党議員は捨ててしまったのだろうか。

 9月の自民党総裁選で安倍首相は3選され、既に第2次安倍政権は7年目に入った。総裁選の党員票では石破茂氏が予想を上回る約45%を獲得し、地方の根強い不満を示した。にもかかわらず首相が批判を誠実に受け止める様子はなく、首相に物言わぬ自民党の空気も変わらない。

 自民党は国会で質問時間の配分を増やすよう要求しながら、外国人労働者受け入れを拡大する改正入管法の審議では会期中の成立を急ぎ、参院での与党の質問時間を一部放棄した。まるでつじつまが合わない。

「予備的調査」の活用を

 状況を変える方策はある。例えば1997年の衆院規則改正で設けた「予備的調査」の活用だ。40人以上の議員が要請すれば、府省に対して資料提出などの協力要求ができる。与党が同意しないと国政調査権に基づく証人喚問が実現しない現状を見れば野党にとっては有効な手段だ。

 最近用いられなくなったのは、拘束力に乏しく「刑事訴追を受けている事件」は見合わせる制限もあるからだという。今年3月の森友問題に関する佐川宣寿・元財務省理財局長の証人喚問でも突き当たった壁だ。

 しかし国会と司法の役割は違う。それを考えれば予備的調査は、規則を変更してでも、もっと柔軟に活用すべきではないか。調査を単なるパフォーマンスに終わらせないためにも、調査後は報告書を与野党でまとめて公表する作業も欠かせない。

 国会の議論を活性化させるためには、かつて小泉純一郎政権で検討された与党による事前審査の廃止も真剣に考える時だ。

 政府提出法案を事前に政府と与党が調整し、国会に出てきた時には修正することなく成立する。事前審査が、国会を単なる採決機関にしてしまう元凶と指摘されて久しい。

 非公開の調整より国会の場で政府をただした方が国民にも分かりやすい。自民党が国会での質問時間を増やしたいというのなら、なおさら事前審査はやめるべきではないか。

 自民党の小泉進次郎氏は財務省の文書改ざんを「平成の政治史に残る大きな事件」と語った。国会のふがいない対応も含め大事件と言うべきである。来春、平成が幕を下ろす前に各党で国会改革を実現させたい。

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