メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

社説

次の扉へ 日本外交の構想力 国際協調を先導できるか

 今年は日本を舞台に外交が目まぐるしく動く。

     6月に大阪で主要20カ国・地域(G20)首脳会議、8月に横浜でアフリカ開発会議(TICAD)があり、10月には新天皇の「即位の礼」に伴う首脳外交などが控える。

     国際的な政治や経済の課題に解決策を示し、途上国への支援をうたう。新時代を迎えて晴れやかな日本の姿を世界に披露する機会にもなろう。

     しかし、米国、中国、ロシアなど大国相手に利害を調整するのは容易ではない。大国によるアフリカへの投資競争は過熱するいっぽうだ。

     複雑に国益が絡む外交で成果を出し、日本の評価を高める戦略を構築するにはどうすればいいか。日本外交の構想力が問われる1年になる。

    深まる同盟のジレンマ

     「自由で開かれた、包摂的かつ持続可能な未来社会の実現を推進したい」。先月のG20首脳会議の閉会にあたり、次のG20議長国として安倍晋三首相が掲げた目標である。

     裏返せば、「保護され閉ざされた、排外的かつ持続不可能な現代社会の現実」が横たわる。

     次々と思い浮かぶ。保護貿易主義、権威主義的な政治、移民や難民の排除、地球環境の劣化……。いずれも出口は見えない。

     中でも、世界に多大な影響を与える米中関係の行方は、今年最大の焦点だろう。貿易戦争の着地点は見通せず、サイバー攻撃も絡むハイテク覇権争いは長期化が避けられない。

     日本外交の基本は日米同盟と国際協調だ。だが、足元は危うい。問題は、米中対立により日米同盟のジレンマが深まっている現実である。

     「米国第一」を掲げるトランプ米大統領は貿易赤字削減を目的に中国だけでなく日本にも矛先を向ける。鉄鋼などに制裁関税を課し、本格的な貿易交渉に引き込んだ。

     米国の軍事的優位を脅かすと対中強硬姿勢を示しつつ、日本には高額兵器の購入を次々と迫る。防衛費は5年連続で過去最大になる。

     日本は、軍事的に中国に強い姿勢をとる米国を支持する一方で、貿易問題では米国と対立するという引き裂かれた状況に置かれている。

     北朝鮮の核・ミサイル、中国の海洋進出など日本周辺の厳しい軍事情勢を踏まえれば、米国への軍事的な依存が深まることは否定しない。

     それでも日本の安全を「人質」のように取られて、言われるままに防衛装備品を調達するのであれば、健全な同盟関係とは言えないだろう。

     トランプ米大統領は同盟を国益ではなく負担と考えている--。こうした論評は以前から日米両政府内にあったが、同盟重視のマティス国防長官辞任を機に再燃している。

     次期国防長官に強硬派が就けば北朝鮮情勢が再び緊張するのでは、という不安も出よう。そうなれば、東アジアの安定は遠のく。

     トランプ政権下の日米関係は不安定にならざるを得ない。同盟を基軸としつつ、対米一辺倒から抜け出すことが、日本外交の新たな展開力を生み出すのではないか。

    米中露とのバランスを

     中国はやがて経済規模で米国を追い抜き、軍事でも米国と競う時代が訪れる。日本が軍事力で対抗するには限界がある。むしろ外交による日中関係の安定を優先すべきだろう。

     「競争から協調へ」と訴えて中国との関係改善を進める安倍政権の姿勢は評価できよう。経済分野での連携をてこに協力の道を探るべきだ。

     その際、日中衝突を回避するとともに、日本が米、オーストラリア、インドと進める「自由で開かれたインド太平洋」構想を対決の枠組みにしないよう留意する必要がある。

     安倍首相はロシアとの平和条約締結に強い意欲を示す。北方領土問題を解決して日露関係を強化すれば中国に対するバランス装置にもなる。だが、安易な妥協は、日露接近を懸念する米国の不信を招く。

     競い合う大国がそれぞれ同盟を形成する際、「第三国はより強い国を選ぶ」という「バンドワゴン」の力学が働く。国際社会で米国の地位が低下し、中露が台頭する中、途上国への目配りは欠かせない。

     アフリカには日米中からの投資が集中する。日本には近代的なインフラ、質の高いサービスなどのノウハウがある。だが、覇権争いに映れば地域に分断をもたらすだけだ。

     他にも核軍縮など世界の多くの課題は多国間の協力なくして解決できない。安定した秩序構築に向け国際協調を主導してほしい。

    おすすめ記事

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 池袋暴走 ハンドルほぼ操作せず 87歳男性パニックか
    2. 池袋暴走、ドラレコに音声 87歳男性「あー、どうしたんだろう」同乗の妻の問いに
    3. AAAリーダーを暴行容疑で逮捕 「飲みに行こう」と誘うも断られ平手打ち
    4. 校長のセクハラ告発女子生徒、焼き殺される 「自殺に見せかけるよう」校長自身が指示 バングラデシュ
    5. 池袋暴走事故 亡くなった松永さん親族ぼうぜん「だまされているような」

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです