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本村凌二・評 『ウンベルト・エーコの世界文明講義』=ウンベルト・エーコ著、和田忠彦・監訳、石田聖子ほか訳

 (河出書房新社・4968円)

 中世以来、ヨーロッパでは「巨人の肩に乗った小人」という言い回しが好まれたという。そこに立てば巨人よりもずっと遠くを見ることができるからだ。その半面、もっとも時代の診断が下手なのはその時代を生きる者たちでもある。原著の表題『巨人の肩に乗って』も、語り手としての思想家エーコの重層する文明への史眼が感じられるのだ。

 著者は大学の卒論で中世神学者の美をめぐる問題を扱った。だが、五〇年の歳月を経ても、美の概念の答えは変わらなかったという。美とは人間が美とよぶすべてのものである、と。美しい人間は手に入らずとも讃(たた)えられるが、望ましい人間は所有できないなら苦痛になる。美の経験とは公平無私なところがあるのだ。

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