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社説

次の扉へ 経営者の超高額報酬 社会の監視が是正へ導く

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 人は自らの収入がいくらなら満足し、他人の収入がそれをいくら超えると、怒りを覚えるのか。

     哲学問答のようだが、昨年は企業経営者の高額報酬が論議を呼んだ。

     衝撃が世界を駆け巡ったカルロス・ゴーン日産自動車前最高経営責任者(CEO)の逮捕劇。そして官民ファンドの産業革新投資機構で起きた異例の役員総退陣劇。

     グローバルに展開する企業集団が世界に人材を求めようとする時、国内の常識と国外の相場の開きに直面し、きしみが生じるようだ。

     確かに彼我の差は大きい。米労働総同盟産別会議(AFL・CIO)によると2017年、米大手500社(株価指数S&P500の銘柄企業)のCEO報酬は平均で約15億円。最高は約78億円だった。

     一方、日本の場合、10億円を超えた役員は10人で、うち7人は外国人だったそうだ(「東洋経済」調べ)。

    格差は360倍にも

     ただ米国でも、CEOの報酬が加速度的に上昇したのは近年になってからである。1950年代、米大手企業トップの典型的な報酬額は、国内一般労働者の約20倍だった。それでも大きな開きだが、17年は約360倍まで膨れあがった。

     CEOが1年で稼ぐ報酬を、平均的な従業員が得るには360年働かねばならない計算だ。企業によっては1000年を超える場合もある。

     同年春、社内格差の理不尽さを象徴するような出来事が米国で報じられた。ウォルト・ディズニー・カンパニーで、1万6400人もの従業員が、連邦法で定められた最低賃金を下回る収入しか得ていなかったことが判明した。

     従業員の衣装代を賃金から差し引いて支給したため、実際の受け取りが違法水準となったのだ。

     総額約4億2500万円を従業員に返すことで労働省と決着したが、同社のCEOロバート・アイガー氏は1人で、それもわずか1カ月で、ほぼこの金額を稼ぐ。

     一般の労働者とかけ離れた水準になってもなお上昇を続ける経営者の報酬。関心が集まるきっかけとなったのは、08年のリーマン・ショックを契機とする大不況だった。

     米国では「ウォール街を占拠せよ」に代表される抗議運動が起きた。世の中の仕組みが、富める者をますます豊かにし、労働者の努力は正当に報われないようになっている。不満が現状打破を唱える過激な主張に傾倒していった。

     米国ではトランプ氏が大統領となり、欧州では極右政党が存在感を強めた。英国では国民投票で欧州連合(EU)からの離脱が決まった。

     だが皮肉なことに、こうした反動が向かう先は、中間層や低所得者層の救済ではなく、孤立主義を通じた彼らの一段の困窮である。貿易や国外からの投資が細り、物価が上昇し、経済が活力を失って失業も増えるとみられる。

    カギ握る正確な開示

     放置すれば、先進各国で社会の不安定化が進み、一段と経済が縮小する悪循環に陥る恐れがある。

     では、そうならないようにするための手立てはあるのか。

     昨年から、米国で株式を公開している全企業を対象に、CEOと社内の平均的従業員の収入比の開示が義務化されたのは第一歩だ。従来、CEOの報酬は同業他社と比較されることが多く、情報開示がかえって引き上げ競争を過熱させていた。

     社内の格差に着目することで、企業が長期的に利益を上げ続けられるかを投資家は判断しやすくなる。格差が開き過ぎた企業では、従業員の士気が低下し、入退職が繰り返され、教育も不十分になり、売り上げや利益が落ちると予測されるからだ。

     ただ、現状の開示内容は実態を正確に映していないとの批判が少なくない。年金など長期的に資金を運用する機関投資家の、改善を促す力に期待したい。

     格差是正のため規制が果たす役目は大きい。逃げ道を与えない実効性のある規制は、国民一人一人の声が集まってこそ実現する。

     消費者も無力ではない。CEOの報酬と一般労働者の賃金があまりにもかけ離れた企業の商品やサービスを選択しないといった行動は可能だ。大きなうねりとなれば、株価に影響を与えることもできよう。

     一時的な怒りや嘆きに終わっては変化は起こせない。多数の株主、消費者、そして是正を求める有権者の監視が道をひらく。

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