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平成という時代

平成最後の年を迎えた。平成は、グローバル化やインターネットの普及を背景に社会が大きく変化し、価値観の多様化が進んだ時代だった。さまざまな変化を追うとともに、その先にある次代をどう描いていくべきか考えたい。

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第3部 変化/7(その1) 性の壁越え、父に

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公園で長男と遊ぶ太田有矢さん(左)と沙都さん。3人は血のつながらない家族だ=愛知県内で、大西岳彦撮影
公園で長男と遊ぶ太田有矢さん(左)と沙都さん。3人は血のつながらない家族だ=愛知県内で、大西岳彦撮影

 「とーちゃん、ハローッ」。柔らかな冬の日差しに包まれた公園。2歳になる長男が駆け寄った。「ヨシッ。おいで」。太田有矢さん(41)=愛知県在住=が両手を広げて抱き止めた。妻の沙都(さと)さん(38)に笑みがこぼれた。ありふれた家族の風景。だが、2人は長男の産声を知らない。

 有矢さんは、以前は女性だった。元の名は有香。体は女性、心は男性。性同一性障害を抱え、性別適合手術を受けて2012年3月に戸籍を男性に変えた。翌年に結婚。生殖機能がない有矢さんは、沙都さんと相談して養子を迎えた。

 こうした家族のあり方が認められたのは平成に入ってからだ。昭和は心と体の不一致を抱える人にとって逆風の時代。1969年、性別適合手術をした医師が、旧優生保護法違反で有罪とされた。手術はタブーとされ、日本精神神経学会が性同一性障害の診断と治療の指針を示したのは平成が年を重ねた97年。要件を満たせば戸籍の性別変更を認める特例法が施行されたのは04年だった。

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