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余録

早熟の天才伝説はどんどん年齢をさかのぼるのが宿命で…

韓国ソウルの囲碁道場で勉強する仲邑菫さん=2018年11月(家族提供)

 早熟の天才伝説はどんどん年齢をさかのぼるのが宿命で、ついには「ボルテールはゆりかごの中で詩を作った」となる。だからゲーテが10歳にして7カ国語で物語を書いたと聞いてもすなおには感心できない

 ▲5歳で作曲、6歳で女帝マリア・テレジアの前で演奏したのはモーツァルトである。こちらは音楽家だった父親と欧州各地に旅をしながらの厳しい幼少期教育の逸話(いつわ)も語り伝えられる。いかにもという真実味を帯びた早熟伝説である▲さて現代の日本、父は囲碁棋士九段、母もアマ強豪、韓国のプロ道場で囲碁修業をしてきたという今春10歳になる女の子である。日本棋院の「英才特別採用」第1号として、史上最年少のプロ棋士になる大阪市の仲邑菫(なかむら・すみれ)さんのことだ▲先日は先番コミなしの最小ハンディで井山裕太(いやま・ゆうた)5冠と対局、予定時間を過ぎての引き分けとなった。「昨年よりも格段に強くなった」は井山5冠の評で、ご当人は「打ててうれしかった」と話しながらも、ちょっと悔しげだったとか▲棋士育成で中韓に後れをとった日本囲碁界には期待のつのる英才教育の新星である。小学4年生のあどけない素顔をのぞかせる菫さんは「中学生でタイトルを取りたい」と語る。その屈託(くったく)のない真っすぐな意欲が人をわくわくさせる▲全宇宙の原子の数より多い10の360乗の変化を見せる囲碁の宇宙である。幼くしてそこに足を踏み入れた少女の旅はいよいよその最深部へと向かう。後の世の伝説となるかもしれぬ大人への大冒険旅行だ。

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