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社説

次の扉へ 海の温暖化と酸欠 日本こそ対応策の先頭に

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 お正月に欠かせない、そんな魚が日本各地にある。東日本ならサケ、西日本ならブリが代表格だろう。

     だが、サケの主要産地の北海道では一昨年、昨年と秋サケ漁の不漁が続いた。一方で、サケ漁の定置網にブリが入ることが多くなった。

     背景にあるとされるのが、地球温暖化に伴う海洋環境の変化だ。いずれ、各地の漁場で対象とする魚種や漁法の見直しが迫られ、正月の食卓も様変わりするかもしれない。

     漁業資源の乱獲、プラスチックによる汚染など、温暖化以外にも海はいくつもの難題に直面している。

     日本の領海と排他的経済水域(EEZ)の面積(約447万平方キロ)は世界第6位。危機を直視し、各国の先頭に立って対策を主導すべきだが、むしろ後れを取っている。

    危機に直面する日本海

     2015年に採択された国連の持続可能な開発目標(SDGs)は、「海の豊かさを守る」ことを目標の一つに掲げ、各国が20年までに海域の10%を海洋保護区とすることを求めた。既に世界の領海とEEZの約17%が保護区となったが、日本は約8%にとどまる。

     プラスチックの海洋汚染を防止するため、昨年の主要7カ国首脳会議(G7サミット)でまとまった「海洋プラスチック憲章」も、業界への配慮などから署名を見送った。

     海洋国として恥ずかしい事態だ。このままでは、海の恵みを失うなど手痛いしっぺ返しを受けかねない。

     海は大気に比べ、熱しにくく冷めにくい。地球の大気温を平均で10度上げる熱が海に加わったとしても、海水温は平均で0・01度しか上がらない。温暖化の深海への影響は極めてゆっくりと進む。

     ところが、気象庁によると、日本海の深海(水深2500~3500メートル)では、水温の上昇や溶存酸素量の減少が顕著になっている。

     ロシア・ウラジオストク沖の日本海は冬季、海面付近で酸素を豊富に含んだ海水が季節風で冷やされる。冷え込んで密度を増した水は海底付近まで沈み込んでいく。

     国立環境研究所によれば、温暖化で冬季の冷え込みが緩み、海水の沈み込みが鈍っている。100年後には深海が無酸素化する恐れがあり、生態系に大きな影響が出そうだ。

     日本海は他の海洋と隔離されているので、太平洋などの大洋と比べて温暖化の影響を受けやすいという。日本海全域で水温や酸素量などの詳細データを取得し、今後の予測や対策に生かすことが欠かせない。

     ただ、日本海にはロシア、韓国、北朝鮮のEEZもあり、政治的思惑が交錯する場所だ。日本が全域を勝手に調査することはできない。

     日本政府は関係国に呼びかけ、日本海の変化を継続してモニタリングする体制の構築に努めるべきだ。

    藻場の吸収力を生かせ

     海の温暖化を防ぐには地球温暖化自体を止めるしかない。温室効果ガスの排出削減が対策の基本だが、海洋国ならではの対策もある。

     ブルーカーボンの活用だ。

     海洋生物や海底の堆積(たいせき)物など海の生態系による炭素の蓄積のことを指す。国連環境計画(UNEP)などが09年に出版した報告書で提唱し、注目されるようになった。

     森林が光合成で二酸化炭素(CO2)を吸収するように、沿岸域に分布するアマモなどの海草やコンブなどの海藻、干潟なども、CO2の重要な吸収源となっているのだ。

     日本は入り組んだ複雑な海岸地形を持ち、海岸線の総延長は地球1周分に迫る約3万5000キロもある。これは米国や中国を上回り、領海とEEZの面積同様、世界第6位だ。それだけ沿岸域が広いともいえる。

     港湾空港技術研究所などの試算では、日本沿岸域で年間最大約700万トン近いCO2が吸収されている。これは、日本の排出量の1%に満たないが、海での吸収、蓄積を増やすために藻場の保全や拡大を図ることは、魚の産卵場所や稚魚の生育場所の確保にもつながる。

     温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」では、各国が温室効果ガスの削減計画を定めて国連に提出する。同研究所によれば、約30カ国が削減策として藻場などの活用に言及している。日本はしていないが、計画に位置付ければ、その重要性に関する国民の認知度も高まる。

     地球温暖化の海への影響は、まだ研究の途上にある。かけがえのない海を次世代に継承するために、日本が果たすべきことは多い。

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