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INTILAQ(インティラック)プログラムディレクター・本多智訓さん

本多智訓さん

東北発の社会起業家を育てたい

 東日本大震災をきっかけに東北地方のベンチャー企業などを支援する団体に参画した本多智訓さんは今、社会課題の解決を事業として目指す起業家の育成に取り組んでいる。さらに、ビジネス人材の多様なキャリア構築と副業解禁の流れを背景に、さまざまスキルを持った首都圏の人材と東北の起業家を結び付ける活動にも乗り出した。東北発の社会起業家の育成にかける熱い思いを語ってもらった。(聞き手 本誌・本谷夏樹)

     --東北との縁は。

     本多さん 損害保険会社に入り盛岡支店に配属されるまで全くありませんでした。それまでは、中学校の修学旅行で行った福島県の猪苗代湖が最北でした。父が転勤族で、生まれた横浜市の記憶はなく、学生時代は千葉県柏市に住んでいましたが、自分にはふるさとと呼べる土地はありませんでした。入社してもずっと東京にいるつもりでした。盛岡支店には5年間いましたが、最初の頃は人よりも牛のほうが多い土地じゃないかと、ちょっと〝やさぐれた〟気分でした。

     --その後心境が変わったのですか。

     本多さん 中小企業や会計事務所、自賠責保険料の集金で自動車修理会社を回ったりしていました。生活しているうちに、東北の豊かな自然に魅了されている自分に気付きました。雪が降りモノトーンな冬から、地面の土が見え始め植物が芽吹き色鮮やかな春に向かっていく時期が一番好きでした。自分の生きていく素地がここにあると思ったのです。その後、名古屋支店に転勤して大きな企業や工場などを担当しましたが、その頃には東北に戻りたいという思いが募っていました。

     --それで安定した会社を辞める決断をしたのですか。

     本多さん 思い切ってキャリアチェンジをしようと2010年3月で退職し、東北にIターンするためにまず早稲田大学のビジネススクールに入りました。1年間で集中的にマーケティングやファイナンス、経営戦略などを学び経営管理修士(MBA)を取得しました。そして11年に東日本大震災に東北旅行中に遭遇したのです。翌年、ベンチャー企業を支援する一般社団法人「MAKOTO」で東北支援のキャリアをスタートさせました。

     --「インティラック」とは。

     本多さん 11年の震災直後に、中東のカタールから贈られた1億ドルの義援金を元にしたカタールフレンド基金を活用した、東北での起業家支援プロジェクトです。アラビア語で「立ち上げる」という意味だそうです。一般社団法人「IMPACT Foundation Japan」が運営していて、私はそのディレクターとして、東北が抱えるいろいろな社会課題をビジネスとして解決する事業を起こそうとする人たちを支援する活動をしています。

     --どのような取り組みですか。

     本多さん 仙台市が昨年度から始めた「東北ソーシャル・イノベーション・アクセラレーター」という事業をインティラックが受託し、2期目の今年度も半年間(9月~3月)のプログラムを実施しています。少子高齢化や若者の流出による人口減少が続いている東北地方で、障害者や高齢者福祉、教育、食と農などさまざまな社会課題に対して、持続可能な解決策を見いだしてビジネスにしようとしている社会起業家の成長を後押しする事業です。

     --プログラムの内容は。

     本多さん 1、2期ともそれぞれ12人の起業家が選抜されて参加しています。いずれも高い志と具体的なアイデアは持っている人たちです。それぞれにメンター(指導者)をつけて、なぜその社会課題を解決したいのかを明確に人に伝えられるようにする「言語化」を徹底させます。メンターと一対一の問答をしながら考えを固めていき、数字を入れたビジネスとしての事業計画を作っていきます。参加者はお金もうけをしたいのではなく、困っている人を助けたり、よりよい社会を作りたいと思って起こす事業ですが、自立して持続していけるためにはビジネスとしてちゃんと回っていかなくてはなりません。そして、そのビジネスプランを大勢の前でプレゼンテーションをしてアピールします。それを我々は「旗を立てる」と言っています。

     --これまでにどのような人たちがいましたか。

     本多さん 1期生では、40代の女性が作った、低出生体重児向けのベビー服とギフトカタログの企画・販売をする事業計画が強く印象に残っています。ウェブサイトのデザイン会社を経営している中で、ご自身の第1子が低出生体重児として生まれて1歳半で亡くしたという体験を持っている人です。そのような赤ちゃんが生まれた家族の心のやすらぎとしての「服」であり、それを通して同じ立場のママさんたちが支え合えるつながりを作ることを目指しています。とても心を揺さぶられる事業です。また、印刷会社に勤めていた男性は、発達障害の子どもを授かったことを契機に、親が子どもの発達障害を隠さずに堂々と言える社会を作ることを目指しています。

     --首都圏の人材と東北を結び付ける取り組みもしていますね。

     本多さん この春、「キャリアモデル開発センター」を設立します。現代は、会社に勤めながら別に自分のやりたい仕事をする「副業」が解禁されつつあります。また、いつかは起業したいと思っている潜在的な起業層や、地方へのUIJターンを考えている人が首都圏にはたくさんいます。そのような首都圏のビジネス人材のキャリアモデルの構築と、東北で起業した人たちが求める人材を結び付ける事業です。専門的なスキルを持つ「プロボノ人材」の活用とマッチングです。18年10月に仙台市と一緒にプロジェクトを二つスタートさせ、ふるさとに貢献したいという国際事業団の人やコンサルタント、IT企業の人など7人が参加しています。

     --人生の複線化を求める人が増えていますね。

     本多さん これまでのような自分の時間の切り売りをする副業ではなく、その人が培ってきたキャリアやスキルを、東北の起業家やローカル企業に活用してもらうのです。特別の資格や能力ではなくても、たとえば起業家は管理や会計、データ処理などが苦手な人が多く、大企業に勤めている人が手伝える領域はたくさんあります。

     --ご自身で行っている事業は。

     本多さん 設立の時から関わっている宮城県石巻市のリハビリ専門の介護施設の理事のほか、丸森町でフィンランドサウナの会社を地元の人たちと出資し合って作りました。企業を誘致するのではなく、地元の人たちがリスクを背負って自分たちでやる、という意気込みがなければ地域が活性化しません。キャンプ場の一角を借りて、すぐ近くには川が流れているという素晴らしい自然の中でサウナに入るという、都会では経験のできない施設です。東北ならでは「自然価値抽出産業」と呼んでいます。東北の価値を生かした事業を展開し、移住しないまでも首都圏からの人との交流を増やすことで、交流人口が増加につながると思います。

     ほんだ・とものり 1978年生まれ。2001年早稲田大法学部卒。同大学院経営管理研究科修了。経営管理修士(MBA)。01~10年東京海上日動火災保険(株)で地域営業と企業営業を経験。12年3月一般社団法人MAKOTOに参画。リハビリテーション複合サービスの一般社団法人「りぷらす」理事。「マルモリサウナ」オーナー。17年4月から起業家支援プロジェクト「INTILAQ(インティラック)」プログラムディレクター。仙台市在住。

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