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奇跡の傍らで

出産のリアルを描いた人気漫画「コウノドリ」のモデル、荻田和秀医師が命が誕生する現場からの思いをつづります。

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「安定期」間違いの元 妊娠5カ月、旅行中に出血=荻田和秀・りんくう総合医療センター産科医

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マンガ「コウノドリ」(C)鈴ノ木ユウ/講談社
マンガ「コウノドリ」(C)鈴ノ木ユウ/講談社

 「安定期って、あんたそれ」

 思わず上方落語のサゲ前のような嘆きが口をつきました。実のところ、半分怒っているんです。

 先日、妊娠5カ月(18週)の旅行中の妊婦さんが出血の訴えで来院しました。本来、閉じているはずの子宮口が開き、赤ちゃんを包んでいる膜(卵膜)の一部が見えています。つまり、流産が進行して、にっちもさっちもいかない状況です。イチかバチか子宮口をくくる(頸管縫縮(けいかんほうしゅく)術)か、これ以上進行しないことを祈りながら経過をみるかどちらかしかありません。

 手術そのものに3割程度の流産のリスクがあることを説明しましたが、妊婦さんは手術を選びました。なんとか成功し、しばらく入院した後、自宅近くの病院に戻りました。見知らぬ土地の初めて受診する病院での長期入院は相当なストレスだったろうと思います。でもご主人の嘆きはそれよりも「安定期に入ったから旅行をしたのに、なんでこんなことになったんだろう」という点でした。これにはさすがに苦言を呈したくなったのです。

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