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SUNDAY LIBRARY

木村 衣有子・評『日本酒に恋して』千葉麻里絵/著、目白花子/絵

「今」を切り取る鋭さで日本酒の粋を知る

◆『日本酒に恋して』千葉麻里絵/著、目白花子/絵(主婦と生活社/税別1200円)

 ワインはそうとう飲むけれど日本酒は付き合いでちょっとだけ、だって日本酒はよく分からないから、そう言う知人がいる。その人に『日本酒に恋して』を勧めようとして、どんなふうに言い表そうか考えた末に、私の口から出た言葉は、小学校の図書館にあった学習まんがくらい分かりやすいよ、というものだった。とりわけ、「今」の日本酒の姿を知ろうとするならうってつけの本である。タイトルに配置された言葉どおりの「恋」の浮遊感よりも、「今」を切り取る鋭さが刺さる。

 肴(さかな)と日本酒を対等に配置し組み合わせて「第三の風味」を現出させる。別々の酒蔵のお酒をブレンドして望む味をつくってみる。徳利を持つ手元だけを見つめることはせずに、お酒がどうつくられたかというところにさかのぼってみる。そうやって日本酒とがっぷり四つに組み合ってきた、東京は恵比寿「GEM by moto」の店長を務める千葉麻里絵さんだ。お酒の仕事に就いたのは、20代半ばのことだった。最初にカウンターに立った新宿の店では「店内では日本酒のネガティブな話が出ないように気を配り うんちくおじさんから初心者を守り 居心地のいいお店を目指した」。そして「日本酒を提供する仕事を みんなの憧れの職業にしたい」という。

 お酒というもののイメージは、その味を最初に教えてくれた人や場に、大きく左右される。たいていの場合、自我がそれなりに形成されてから口にするのだから、ただただ無心に味わうなんてこと、ほんとはほとんどありえない。いっぺん刷り込まれてしまえば、その知識はなかなか更新されない。だから、千葉さんが用意した、柔らかくそして新しいクッションみたいな店で日本酒を知る人は幸せだなと思う。

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木村衣有子(きむら・ゆうこ)

 1975年、栃木県生まれ。文筆家。ミニコミ『のんべえ春秋』編集発行人。著書に『もの食う本』『コーヒーゼリーの時間』『コッペパンの本』『キムラ食堂のメニュー』など。西武ライオンズファン

<サンデー毎日 2019年1月20日号より>

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